脂肪のもとは糖であり、糖は光合成で植物がつくります。光合成には明反応と暗反応があり、明反応で、光エネルギーをATPとNADPH+H+に変え、暗反応では、それらを使って、二酸化炭素(CO2)から糖をつくります。
この記事では、明反応まで説明します。
すべては光合成から
光合成を行う植物はみな生産者です。すべては光合成からスタートします。
光合成とは、光(基本は太陽光)を利用して二酸化炭素(CO2)と水(H2O)を糖質(C6H12O6)と酸素ガス(O2)に変換する反応です。
得られる糖は植物や微生物の体内で、脂肪に変化します。また、別な生き物に食べられた時、糖はまず燃料になりますが、余れば脂肪になります。そして、脂肪は消化されてもモノグリセリドと脂肪酸に分解されるだけで、次の生き物の脂肪となります。
脂肪は受け継がれていきます。
しかし、すべての大本は、光合成であり、葉緑素を持った植物と葉緑素を持った微生物だけです。すごいなと思います。
この記事では、光合成の仕組みのうち、エネルギーをつくる明反応をまず紹介します。参考文献は、カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学です。評判がよいみたいですが、この本はどうも私には読みにくいです。
何度も読み返さないと理解できない。
光合成の化学式
光合成は次の化学式で表すことができます。
6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2
しかし、のちに右辺の酸素(O2)はすべて水(H2O)由来であることが分かり、化学式は次のようになりました。
6CO2+12H2O→C6H12O6+6O2+6H2O
光からエネルギーをもらって、電子に変える。光合成の仕組みは、電子をエネルギーにして、糖をつくります。TCA回路-脂肪を燃やすでATPをつくる仕組みを書きましたが、その本質は、電子の移動でした。とても似ています。
光合成の明反応と暗反応
光合成には、2つの反応経路があります。明反応と暗反応と呼ばれます。
明反応
明反応は、光エネルギーを必要とする反応です。
葉緑体のチラコイド内で行われます。
明反応は、光エネルギーを電子に変換し、ADP+リン酸をATPにすることと、電子伝達体NADP+をNADPH+H+にする反応です。
暗反応
暗反応は、光エネルギーは利用しません。
葉緑体のストロマという部分で行われます。
暗反応は、明反応で産生されたATPとNADPH+H+を利用し、CO2を使って糖を産生します。
この記事では明反応だけ説明します。
明反応と暗反応では、もちろん、明反応が先に起きます。光から反応するためのエネルギーをつくるからです。
明反応をもっとくわしく
明反応は、光エネルギーを電子に変換しATPと電子伝達体NADPH+H+に渡す反応です。
まず、この反応には2種類あります。
①光エネルギーを電子に変換し、ATPと電子伝達体NADPH+H+の2つに渡す場合
②光エネルギーを電子に変換し、ATPだけに渡す場合
①は、電子伝達の非循環経路といいます。
②は、電子伝達の循環経路といいます。
非循環経路
非循環経路は2つの異なる光化学系を必要とします。こんなことを書くと読む気がなくなるので、図を載せましょう。図を見たら大したことがないのが分かります。文字だけ読んでいると分からなくなります。
光化学系Ⅰは、光エネルギーを使ってNADP+に電子を渡してNADPH+H+にします。
光化学系Ⅱは、光エネルギーを使って水を酸化して、電子(2e–)、プロトン(H+)、酸素(O2)にします。
図を見て、なんで順番が先なのに光化学系Ⅱなのかと思いませんか?この理由は、光化学系Ⅰが電子伝達の循環経路にも関係があるからだと思います。両方とも関係しているので、光化学系Ⅰを基本に考えるということなのでしょう。
水からNADP+への電子伝達の非循環経路の反応はZスキームモデルといわれます。これは図を横から見てください。経路がZ型になっているのです。
光化学系Ⅱ
光化学系Ⅱに光があたると励起され、クロロフィルの反応中心から電子が飛び出して、電子は最初の電子受容体に受け渡されます。この電子受容体は、電子伝達鎖の最初の電子伝達体のことです。
その時に反応中心は、水から電子(2e–)を奪い基底状態にもどります。すると、水は1/2O2と2H+になります。
この電子伝達鎖では、プロトン(H+)の濃度勾配が図中のストロマとチラコイド内部でできます。
- PQは、プラストキノン
- Cytは、シトクロムbf
- PCは、プラストシアニン
を表しています。
電子(2e–)がCyt(シトクロムbf) に受け渡されると、ストロマのプロトン(H+)がチラコイド内部に汲み入れられて、濃度差ができます。
そして、電子伝達鎖にATP合成酵素があり、プロトン(H+)の濃度差を解消するときに、ATPができます。
ミトコンドリアと似ています。是非、脂肪からATPをつくる-電子伝達系を開いて比べてみてください。
次に、電子伝達鎖から電子(2e–)は、光化学系Ⅰに渡されます。
光化学系Ⅰ
光化学系Ⅰにも光があたると励起され、反応中心から電子が飛び出して、フェレドキシン(Fd)に電子(2e–)を渡します。反応中心は光化学系Ⅱの電子伝達鎖から来た電子(2e–)を受け取り基底状態に戻ります。
電子(2e–)は次にフェレドキシン-NADPレダクターゼ(FNR)に渡され、2個のプロトン(H+)を使って、1分子のNADP+がNADP++H+になります。
次に循環経路を説明します。
循環経路
電子伝達の循環経路は、葉緑体内において、NADP+に対してNADP++H+の比率が高い時に起きます。つまり、NADP++H+/NADP+が大きくなる時ですね。
これはどんな状態の時なのでしょう。日差しが強い日なのか気温が高い日なのか?知りたいところです。
循環経路は、ATPしか産生しません。この経路では、光に励起されたクロロフィルの反応中心から受け渡された電子(2e–)が、一連の反応の最後に、同じクロロフィルに戻らされることから循環経路と呼ばれます。
循環経路が始まる前は、光化学系Ⅰの反応中心は、基底状態にあります。クロロフィルは光によって励起され、反応中心から電子(2e–)が飛び出し、フェレドキシン(Fd)に電子(2e–)を渡します。
フェレドキシン(Fd)は、電子(2e–)をPQ(プラストキノン)に渡します。PQ(プラストキノン)は、2個のプロトン(H+)をチラコイド膜を超えて汲み入れます。また、PQ(プラストキノン)は電子伝達鎖内で電子(2e–)をCyt(シトクロムbf)、プラストシアニン(PC)へと受け渡します。
プラストシアニン(PC)まで来た電子は、最終的にクロロフィルの反応中心に戻されて、反応中心が、基底状態に戻ります。
電子伝達鎖では、電子(2e–)がPQ(プラストキノン)、Cyt(シトクロムbf)、PC(プラストシアニン) に受け渡されると、ストロマのプロトン(H+)がチラコイド内部に汲み入れられて、濃度差ができます。
電子伝達鎖のATP合成酵素によって、プロトン(H+)の濃度差を解消するときに、ATPができます。
この続きは、炭素を固定するカルビン回路 光合成暗反応をお読み下さい。
NOTE
全ての始まりは光合成です。そして、エネルギー源である糖を体の中で貯蔵するのが脂肪です。
光合成の明反応は、光から植物が体内で使えるエネルギーを取り出す反応です。これをもとに二酸化炭素(CO2)からブドウ糖を作ります。