肉だけを食べて生活するとどうなるか?

この記事では、肉だけを食べ続けたら健康状態がどのように影響されるのかについて書きます。肉にはご承知の通り、飽和脂肪酸とコレステロールがたくさん入っています。どんな結果になるでしょうね?

肉を食べたら野菜を食べなさいとはいわれなくてもわかっていることです。肉はおいしいですが、肉だけを食べ続けることはかなり苦痛だと思います。口直しに生野菜を食べたくなります。

そして、健康のためにもよくないだろうと単純に思いますが・・・。

肉

引用させていただく本は、ポーリング博士のビタミンC健康法 (平凡社ライブラリー)です。著者のライナス・ポーリング博士についてはウイキペディアのライナス・ポーリングをお読みください。

なぜ、ビタミンC健康法の本に肉だけを食べ続ける実験がでてくるのかって?それはあとで説明します。

まずは、肉だけを食べ続ける実験について抜き書きしましょう。

肉だけを食べ続ける実験

肉の価値について、半世紀以上前に北極探検家ヴィルヒャウルマー・ステファンソンが観察している。

彼は一八七九年にカナダのマニトバでアイスランド人を両親として生まれた。そして、一、二歳のときにその地方が飢餓に見舞われて、主として魚を食べて一年間命をつないだ、という経験を持っている。

アイオワ大学を卒業後、ハーバード大学で三年間人類学を学び、二度にわたってアイスランドに考古学の調査に行ったが、一九〇五年から北極の調査を始めた。

一年間エスキモーと過ごし、その言語と文化を習得してわかったのは、エスキモー式の肉だけの食事をとりつづけても、かなりよい健康状態が保てるということだった。

ステファンソンは、一九二六まで一一年半を北極で過ごしたが、そのうち九年間は、肉だけの食事しかしなかった。肉しか食べなかった期間で最も長かったのは九か月だった。

一九二二年、四三歳のときに彼は検診を受けたが、年相応に健康であった。たとえば、血圧は一一五/五五であった。彼は八二歳まで生きた。

ステファンソンが肉だけの食事でも健康が保てると主張したので、入念な実験が計画され、これをステファンソンともう一人の北極探検家が一九二七年から実行した。

二人は一年間、肉だけしか食べなかった。(ウシ、子ヒツジ、子ウシ、ブタ、ニワトリなどの脂身と赤身、および、ときにはレバー、腎臓、脳、ベーコン、骨髄)。

旅行中で肉が手に入りにくいとき、ステファンソンは、卵、バター、魚も食べた。二人とも肉類は大概ゆでるか煮るかしたが、骨髄は生で食べた。牛乳は飲まなかった。

はじめの六ヵ月は病院で観察され、その後は通常の活動に戻ったが、肉だけの食事はそのまま続けた。その間、とくに他の食物を食べたいとは思わなかった、と彼らは報告している。しかし、ゆでたマトンは、ジャコウウシやカリブーやオオツノヒツジほどうまくなかった、と『発見』と題するステファンソンの自伝でこぼしている。

その間、詳しい検診が続けられたが、一年後の健康状態は二人とも、実験を始めたときと同じくらい良好である、という結論だった。

その食事には、一日あたり二三〇グラムの脂肪と一二〇グラムのタンパク質が含まれていたが、炭水化物はわずか五~一〇グラムしかなかった。動物性脂肪を大量に摂取して二人に害があったとはみえなかった。

一年たって、二人のブドウ糖耐性能は低下していたが、ふつうの食事に戻ると二週間たらずで正常になった。

注目すべきことは、二人が肉だけの食事でもビタミン欠乏症にならなかったことである。たぶん、新鮮な肉には最低必要量のビタミンCおよび各種ビタミンが含まれているのだろう。(中略)

ステファンソンの実験は、一般の人が食物に含まれる脂肪に抱いている不安と関連がある。脂肪についての不安が広まったのは、一九五五年にアイゼンハワー大統領が冠状動脈閉塞を患ったときからである。(中略)

ステファンソンは、ホワイトに挑戦し、自分は高脂肪の食事によって良好な健康状態を保ったし、また高脂肪食のエスキモーは健康である、と主張した。(中略)

ホワイトは、彼の学理を引っ込めて、ステファンソンがみずからの食生活の冒険を記した『陸の脂肪』という本の新版に、謝罪の意を込めた序文を書いた。

文中、ブドウ糖耐性能とは、ブドウ糖に対する血糖のコントロール能力のことです。肉だけを食べていると、一日にわずかな炭水化物しか食べないことになり、甘い物を食べた直後のようにブドウ糖が大量に血液中に放出されることはなくなります。

そのため、血糖値を下げるための能力は一時的に低下しているということです。

それにしても、すさまじい量ですね。

高タンパク高脂肪でも平気なのか

1日に230gの脂肪と120gのタンパク質を食べていたと書いてあります。高タンパク高脂肪の食事です。脂肪230gとは、小さいビンの油なら1日1本ずつ使うすさまじさですね。

肉から120gのタンパク質を摂るには、肉にはだいたい10%(やや少ないですが)タンパク質が含まれていると考えると、その約10倍、1㎏以上の肉を毎日食べていることになります。1日だけなら頑張って食べられるかもしれませんが、毎日こんなに食べられませんな。

こんな食事をしているのに、野菜を食べない。毎日高タンパク高脂肪の食事を続けても健康状態が変わらない、心臓病で倒れることもなかったという結果でした。

調理方法に注目

ただ、注目すべきは、調理方法です。煮るかゆでるか生です。焼いて食べたとは書かれていません。煮るかゆでるなら調理温度は最高100℃です。

焼けばもっともっと調理温度が上がります。これは重要なポイントではないかと思います。

日常的に経験することですが、焼肉屋さんに行って食べ始めると、最初は焼ける香ばしいにおいや味に幸せを感じます。しかし、焼肉は意外とたくさん食べられないものです。

煮るかゆでるか生で食べることと、焼いて食べることに何か大きな違いがあるのかもしれません。

ヴィルヒャウルマー・ステファンソンについて

日本語で「ヴィルヒャウルマー・ステファンソン」と入れても何も出て来ませんが、Vilhjalmur Stefansonと入れたらウイキペディアが出て来ました。ご興味があればご覧下さい。私はGoogle Chromeを使っていますが、翻訳までやってくれるので便利になりました。

引用文中にあった『陸の脂肪』は、Stefansson, Vilhjalmur. The Fat of the Land; The Macmillan Company, New York, 1956.のことです。

たしかに表紙にハーバード大学医学部の心臓学者、ポール・ダドレー・ホワイトの名前が見えます。

そして、The Fat of the LandはPDFで読めるようになっていました。

ライナス・ポーリング博士の本を読んでいます

今、3年前に神保町の古本屋で買ったポーリング博士のビタミンC健康法 (平凡社ライブラリー)を読んでいます。20年以上前の文庫本なので、文字が小さく450ページ以上あるので読むのが大変ですが、実に面白い本です。

絶版になった本ですが私は500円で買いました。アマゾンではすごい値段がついていますが、有名な本なので図書館にあると思います。

この本は、一番にビタミンCを毎日数グラム以上たくさん摂取することをすすめている本なのですが、それ以外に、砂糖をとらないように強く主張しているのです。

砂糖がコレステロールを上げる

その理由は、コレステロール値が上がってしまうからです。甘い物を食べているとコレステロールが上がるって知ってました?

私は知らなかったので、面白くてむさぼるように読みました。

砂糖は二糖類で、消化されると同じ分量のブドウ糖と果糖になります。ブドウ糖はデンプンを分解するとできます。果糖は字の通り、果物の糖です。

ポーリング博士は、果糖は代謝にブレーキがかからないので、体の中で、コレステロールに変わりやすいというのです。

もちろん、ブドウ糖も果糖もヒトはずっと昔から利用してきたものです。ヒトはブドウ糖をエネルギー源として使って来ました。

しかし、ヒトが砂糖を使い始めた歴史は浅く、砂糖は果物に含まれているのとは比較にならないの量の果糖をからだに供給してしまうのです。大量の果糖摂取はヒトのからだには慣れていないことです。

そのため、コレステロールの数値が上がってしまう。

果糖の代謝を調べてみると、確かにブドウ糖に比べてブレーキがかからず、アセチルCoAがたくさんできて、コレステロールのもとになるのです。

このあたりのことは果糖がよくない理由を調べてみたという記事で書きました。

この記事では、砂糖(ショ糖)を食べるとコレステロールが上がりやすくなること。それは、果糖が原因になっていること。さらに、果糖がからだの中でブドウ糖とは別に代謝されることと、大量の果糖は体に負担になることを調べました。果糖(フルクトース)は、

コレステロールが問題だ

肉をたくさん食べたらコレステロールが上がるだろうと思いますね。コレステロール値が上がると心疾患や血管系の病気にかかりやすくなります。

アメリカでは砂糖を使ったすごく甘いお菓子が好まれます。砂糖を極力減らすのと脂肪を減らすのとどちらか効果的なのか?ポーリング博士は、砂糖を極力減らすことをすすめていて、その説明のために、冒頭の肉だけを食べ続ける実験を紹介したのです。

アイゼンハワー大統領

脂肪が体によくないという話はかなり昔からあります。

私はまったく気にしませんでしたが、私が子供の頃の昭和40年代、西暦で書くと1970年頃のことでしょうか。給食のおかずに出て来た肉の脂肪を、先割れスプーンで切って残していた同級生がいました。なぜ食べないのか聞くと、お父さんがそうしているからといってました。

1955年に(当時)アイゼンハワー大統領が冠状動脈閉塞になり、大統領の主治医だったハーバード大学医学部の心臓学者、ポール・ダドレー・ホワイトがこの機会をとらえて、一般の人にアテローム性動脈硬化症にコレステロールが悪いことを教え、脂肪を含む食品の摂取を減らすように忠告したと記録にあります。

アイゼンハワー大統領の心臓病の話はいろいろな記事で見かけます。コレステロールが悪いという話のわかりやすい一例として使われていたのでしょう。

動物性脂肪(飽和脂肪酸)とコレステロールのとり過ぎに対して警告する話なのです。

しかし、ポーリング博士の本を読むと、コレステロールに影響があるのは、砂糖のとり過ぎの方がずっとよくないと考えられているようです。でんぷんでもブドウ糖でもなく、砂糖(ショ糖)が問題だと考えているのです。

まとめ

ポーリング博士は、肉食が最上だといっているわけではありません。肉だけを食べる実験をしても健康状態に大きく影響しないことを示しただけです。砂糖を減らすという主張のために載せたのです。

しかし、私は油についての記事をずっと書いてきて、近頃はコレステロールについても書いていたので実に興味深い話でした。特にメモしておきたいことは次の3点です。

飽和脂肪酸をたくさんとっても健康状態に影響がなかった。

1日230gの脂肪とは相当な量です。コレステロールもたくさん入っているでしょう。肉なので飽和脂肪酸ばかりの脂肪です。脂肪のカロリーは9×230=2070kcalあります。食事に炭水化物がほとんどないので、これがエネルギー源だったのでしょう。

調理方法が煮るゆでるか生であった

焼いたり揚げたりするものがありません。焼いた場合、鉄板表面は200℃くらいあるそうです。天ぷらは180℃の油で揚げろといわれます。この温度だと飽和脂肪酸が多いとはいっても脂肪やコレステロールが酸化しそうです。煮るゆでるなら圧力鍋を使わない限り、最高温度は100℃です。

炭水化物をほとんどとらないと細身になる

これはVilhjalmur Stefansonに書かれていました。体が必要なだけ食べられ、炭水化物のみが制限された食事をした場合、総カロリー数は関係なく、健康状態がよく活力があり細身になるそうです。もちろん、炭水化物をとった場合は、炭水化物が優先的に使われ、脂肪は貯蔵されます。炭水化物の他に1日230gの脂肪をとっていたらすごい勢いで肥満するでしょうね。

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