ナタネの品種について無エルカ酸(エルシン酸)と低エルカ酸のもの

なたねは、もともと体によくないエルカ酸(エルシン酸)とグルコシノレートを含んでいましたが、国産の場合、品種改良により、これら成分を含まないダブルロー品種ができています。

しかし、なたねの自給率は0.05%であり、外国産のなたねを搾った油は、同じく改良されていますが、遺伝子組換え不分別であると思っておいた方がよいようです。

菜の花

いま、農家が教える手づくり油読本―栽培・搾油から燃料までを読んでいます。この本では、油を搾る作物が、ひまわり、なたね、ゴマ、エゴマ、ツバキの順番に書かれています。

きっと搾りやすい順番に書かれているんだろうと思います。

たまにファーマーズマーケットのようなイベントに行くと、エゴマ、ナタネ、ゴマ油がよく販売されています。今は、エゴマ油が一番人気かもしれませんね。

ところで、なたね油はカノーラ(キャノーラ)油へで、なたねの昔の品種には問題があった話を書きました。炭素数22の一価不飽和脂肪酸エルカ酸(エルシン酸)が心臓と腎臓によくない作用があるのです。それで、カナダで品種改良され、カノーラ(キャノーラ)油ができたのでした。

国産の品種でもエルカ酸含有量がきわめて低い品種について少し書きましたが、もっとたくさんあることが分かりました。

この記事では、それら、なたねの品種について書きます。

日本のなたね生産はとても少ない

日本で栽培されたなたねから生産されたなたね油は、何と年間200トンでした。ちなみに、年間の収穫量は約1000トンだそうです。私がファーマーズマーケットで見たなたね油はとても貴重なものだったんですね。

一方、日本は、なたねの種子を毎年200万トン以上輸入し、なたね油を90万トン程度生産しています。幸書房さんのサイトになたね油の説明があります。ちなみに世界三大油糧作物は、パーム、大豆、なたねです。なたねは生産量の多い作物です。

単純に計算して、日本のなたね油の自給率は、なんと0.05%です。

輸入なたねは遺伝子組換え不分別

なたね輸入量の80%はカナダから、20%はオーストラリアからのものです。

ちなみに、農水省が平成25年4月に出した遺伝子組換え植物実態調査結果によると、輸入相手国であるカナダでは、1996 年(平成8年)に遺伝子組換えセイヨウナタネの作付けが開始され、2009 年(平成 21 年)には栽培面積の9割以上が遺伝子組換えセイヨウナタネになったとあります。

遺伝子組み換え作物を気にする人にとっては無視できないと思います。

スーパーに並んでいるカノーラ(キャノーラ)油は、遺伝子組み換えのなたねを使った油なのかなと思ってメーカーのサイトを見ました。

残念ながら、以前あった、質問と回答はなくなってしまいました。こういう場合は、遺伝子組み換えなんだなと思っておくことにします。

自給率0.05%のなたねですから、選択権はないですね。私たちにできることは、メーカーが公開してくれた情報をもとに自分で使う油を選択していくことだと思います。

国産のダブルロー品種

エルカ酸(エルシン酸)とグルコシノレートを低減化した品種はダブルローといわれます。

なたねの古い品種は、エルカ酸(エルシン酸)を約46%も含んでいました。これを品種改良すると、同じ一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が増えて全体の62%までになりました。オレイン酸は、オリーブオイルとツバキ油の主成分です。

また、なたねにはもう一つ困った問題がありました。家畜飼料として搾りかすを使いたいのですが、かすに含まれるグルコシノレートのために使用できなかったのです。グルコシノレートの分解物が家畜の甲状腺を肥大させるのです。

ダブルローの品種は、国産では6種類あります。もし、ファーマーズマーケットや通販で国産のなたね油を買う機会があったら、生産者に品種について聞いてみるとよいと思います。

アサカノナタネ(なたね農林46号)

カナダから分譲された無エルカ酸(エルシン酸)遺伝資源「Z・E・N」と、中生で多収であるが高エルカ酸(エルシン酸)の「チサヤナタネ」を交配し、無エルカ酸(エルシン酸)、草型良、多収の系統を選抜して、1990年「アサカノナタネ」の品種名を付して公表されました。

福島県で栽培が奨励されています。日本で初めての無エルカ酸(エルシン酸)型の品種。

なお、中生(ちゅうしょう)とは、作物の成熟期が早生(わせ)と晩生(おくて)の中間で普通のもののことをいいます。

参考:なたね新奨励品種「アサカノナタネ」

キザキノナタネ(なたね農林47号)

エルカ酸(エルシン酸)含有率は高いが寒雪害に強く、また草丈は高いが倒伏に強い東北72号に、ドイツから導入した、草丈は高く倒伏しやすいが、多収で無エルカ酸(エルシン酸)の「ラポーラ」を交配して、無エルカ酸(エルシン酸)の多収で、耐倒伏性を有し、機械化適応性の高い系統を選抜したもの。

1990年「キザキノナタネ」の品種名を付されました。青森県と北海道の一部で栽培されています。

参考:無エルシン酸なたね新品種「キザキノナタネ」

キラリボシ(なたね農林48号)

スウェーデンのダブルロー品種Karatと、倒伏に強いが種子にエルカ酸(エルシン酸)とグルコシノレートが多い盛系188を交配してダブルロー品種として選抜したもの。現在は主に山形県で生産されています。

参考:キラリボシ

ななしきぶ(なたね農林49号)

無エルカ酸(エルシン酸)のアサカノナタネとキザキノナタネは、東北地方向けであり、温暖地向けの無エルカ酸(エルシン酸)品種がなかったため、育成されました。

成熟期が中生で耐倒伏性が強い無エルカ酸(エルシン酸)の「ナタネ盛脂148」に成熟期が中生で、エルカ酸(エルシン酸)を含む「オオミナタネ」を交配し、育成されたものです。油は無エルカ酸(エルシン酸)ですが、グルコシノレートが多い。

参考:ななしきぶ

菜々みどり

無エルカ酸(エルシン酸)で耐寒雪性に優れ、多収ななたね品種の育成を目的として、エルカ酸(エルシン酸)を含まない「東北84号」に、エルカ酸(エルシン酸)を含むが耐倒伏性が強い「カミキタナタネ」を交配し、育成されたもの。

搾油用を目指して育成したが、キザキノナタネより少なかったため、野菜(ナバナ)用として青森県で栽培されています。種子の油には、エルカ酸(エルシン酸)を含みません。

タヤサオスパン(T830)

タキイ種苗が育成した搾油用のダブルロー品種。寒雪害抵抗性が強く、成熟期はやや晩生で、莢(さや)が長く一莢結実粒数が多く多収です。

NOTE

品種改良の話を読むと、いつも遺伝の力はすごいなと思います。私は生物Ⅰを選択していたので、まだ、メンデルの法則は(きっと)覚えています。

また、植物には意外と毒を持つものが多いのです。以前、じゃがいもを凍結乾燥させると毒を抜き長期保存が可能になったという記事を書いたことがあります。

ジャガイモの芽は有毒だとよく知られていますが、野生種はいも自体にも中毒成分が強いものが多かったそうです。今、八百屋さんに並んでいるじゃがいもも無毒というわけではありません。小さいいもは、子供に食べさせないようにという知らせを時々見かけます。

じゃがいもを凍結乾燥させると毒を抜き長期保存が可能になった
じゃがいもは育てやすく生産性が高いので、世界中で栽培されています。しかし、ソラニンやチャコニンという毒になる成分を含みます。アンデスの山岳地帯では古い時代に凍結乾燥させることで毒を抜き長期保存が可能になりました。そして、じゃがいもを主食にす

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

タイトルとURLをコピーしました