なたね油はカノーラ(キャノーラ)油へ

なたねの在来種には油にエルカ酸(エルシン酸)を含むことと、搾りかすにグルコシノレートという植物毒を含む問題がありました。カナダで品種改良によって解決されてできた油が、カノーラ油です。また、日本のなたねも、品種改良で無エルシン酸低グルコシノレートの品種ができています。

菜の花

カノラー油はカナダで品種改良されたなたね

油に興味を持つようになってから、カノーラ(キャノーラ)油って何を搾ったのかなと思っていました。店頭でよく見るし、値段がとても安いです。

ちょっと調べてみると、カノーラ(キャノーラ)というのはカナダで品種改良された「なたね」のことをいうそうです。canolaと綴ります。なぜ品種改良されたかというと、なたねの在来種には2つ問題があったからです。

この記事では、その問題についてと、もう一つ、国産のなたねはどうなっているのかということを調べてみました。

なたね油の2つの欠点

なたね油には、心臓と腎臓への脂肪蓄積、骨格筋や心筋の障害、生育不全を起こすエルカ酸(エルシン酸)を含むことと、搾りかすにグルコシノレートという植物毒を含む、2つの欠点がありました。

エルカ酸(エルシン酸)が含まれる

なたね油には炭素鎖の長い脂肪酸、エルカ酸(エルシン酸)が半分程度含まれていました。エルカ酸の構造式は以下に載せます。分子式はC22H42O2です。炭素数が22個あります。1価の不飽和脂肪酸で、カルボキシル基(-COOH)の反対側から9番目に二重結合があり、ω(オメガ)9の脂肪酸です。

二重結合での向きは同じ方向で曲がっているので、シス型ですね。このまま炭素を4個減らして炭素数18だと、オリーブオイルでおなじみのオレイン酸になります。

エルカ酸

エルカ酸

脂肪酸は、構造が似ていてもいろいろな性質の違いを持つようです。オレイン酸は体にとてもよいのに、エルカ酸はよくない。エルカ酸を多量に含むなたね油で飼育した動物は、心臓と腎臓への脂肪蓄積、骨格筋や心筋の障害、生育不全を起こすことが分かり、1956年にカナダでは食用の販売が禁止されました。

搾りかすにグルコシノレートという植物毒を含む

もう一つは、搾りかす(粕)にグルコシノレートというグルコース(ブドウ糖)、チッソ、硫黄などからなる植物毒を含むことでした。なたね油の搾りかすはタンパク質が豊富で、反芻動物は食べても平気なのですが、それ以外の動物の飼育には適さないものとなっていました。そのため、搾りかすは肥料として使われていました。あぶら粕というやつですね。

この問題を解決するため、カナダで交配による品種改良が行われ、1974年には、カナダ産なたねの95%が低エルカ酸になりました。

カナダでなたねの品種改良が進んだのは、カナダ国内に油糧資源がなかったためです。第二次大戦中に油脂が欠乏し、そのためになたね栽培が始まったという歴史があります。第二次大戦前は、世界のなたねの90%がインドと中国で生産され、現地で消費されていた程度でした。

その後1978年には、「カノーラ」が初めて品種登録され、その後、1996年まで、何度か規格がより厳しく改正され、油脂のエルカ酸が1%以下、グルコシン類(グルコシノレート)20μmol/g以下に定められています。μmol(マイクロモル)とは、1molの100万分の1を表す単位です。

私のような年代にとっては、意外と最近の出来事なんだなと思います。ちなみになたね油は、パーム油、大豆油に次いで、世界第3位の生産量となる植物油です。大豆粕もそうでしたが、なたね粕はエルカ酸とグルコシノレートの問題が解決されたので、家畜の飼料として取引されています。

また、品種改良の方法は、以前は交配による育種しかありませんでしたが、現在では遺伝子組み換えも行われています。また、エルカ酸は食用としては不適なのですが、化粧品の原料として使われるので、在来種もなくなったわけではありません。

なぜ含油率が低い大豆から油を搾るのかで書きましたが、穀物から油を搾る場合、一番の目的は、油ではなくて油を搾った後の粕(搾りかす)を家畜の飼料とするためです。なたね粕の場合は、40%くらいタンパク質を含んでいるようです。(出典)昔は、肥料としていましたが、今は化成肥料(化学肥料)がたくさんありますから主に家畜の飼料となります。

家畜を育てて、人が食肉として食べるためです。

国内のなたね油

えごま油の「荏」に見覚えはないですか?で書きましたが、日本でなたねの栽培が盛んになったのは江戸時代になってからです。灯油(ともしびあぶら)として明かりに使われていました。なたねの前には、えごま油がずっと使われていたのですから、現代から考えると、何とももったいない話です。ちなみに、なたね油は「すす」が少ない特徴があったようです。

在来種にはなたねの同じ問題があった

日本で作られていたなたねも、何の品種改良もされていない在来種ですから同じ問題があったはずです。問題にならなかったのは、他国に比べて食事での油の摂取量がかなり少なかったのと、畜産業が盛んでなかったためだと思います。日本人が畜肉を食べ始めたのは明治時代からです。日本人のタンパク源は、なんといっても魚だったのです。日本人の食事は、米と、魚と、海草(わかめやこんぶなど)と、野菜でできていたんだなと思います。

日本人の食事の変化については、記事を改めて調べてみようと思います。

品種改良で無エルシン酸低グルコシノレートの品種ができた

ネットで国内のなたね品種について調べてみると、無エルシン酸、低グルコシノレートのなたね品種として、「キラリボシ」が出て来ました。2004年に登録された品種だそうです。(出典)それまでには「キザキノナタネ」という品種が出て来ました。(出典

こちらは、無エルシン酸が特徴の品種だったようです。エルシン酸を含まない日本で初めての品種で1990年11月なたね農林47号として登録されたそうです。こちらは交配による育種によって品種改良されました。

これはかなり最近のことでした。今は、遺伝子組み換えを嫌がる人が多いですが、それよりも前から、なたね在来種には問題があったということは知っておいてよいことだと思います。

産直市などで、搾りたてのなたね油を見かけることがあります。気にする方は、品種について聞いてみるとよいでしょう。

昔と違って現在の食生活は、どう考えても脂肪の割合が増えていると思うからです。脂肪の量が増えるとそれに起因する害が出てくるかもしれないと思います。品種改良を研究している農研機構は本当にありがたい。

NOTE

なたねに毒があるなんて聞くと、大変じゃないか!なんて思いますが、植物の毒は、梅干しの青梅のことを思い出すと結構あるなと思います。

人気の亜麻仁油も亜麻の種は生は毒があり、焙煎する必要があります。また、アーモンドもそうでした。ビターアーモンドには青酸化合物であるアミグダリンが多く含まれるため、味が苦く、大量に摂取すると有害であると、ウイキペディアに書かれています。

しかし、エドガーケイシーは、生アーモンドを毎日2、3粒食べることをすすめていて、私は昔アメ横や合羽橋の食品問屋に行って生アーモンドを1キロずつ買っていました。

とはいうものの、油は毎日使うものですから、こういう話は知っておいた方がいいなと思います。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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