アセチルCoAとは酢酸のことか

この記事では、アセチルCoAは、酢酸を補酵素Aが運搬していく形であり、アセチルCoAの本質は、酢酸であることについて書きます。私と同じように化学を勉強して来なかった人の中には、アセチルCoAの意味が分からない人がいるのではないかと思って記事にしました。

酢

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最初、アセチルCoAの書き方に疑問を持った

初めてアセチルCoAを知ったのは、脂肪酸のβ酸化について調べていた時だったと思います。脂肪酸はβ酸化で炭素2個ずつ切られていくのですが、そのときにできるのがアセチルCoAです。

こんな構造式が書かれていました。

CoAは補酵素Aと呼ばれるものであること。こんな元素記号はありませんから、補酵素A:Coenzyme Aの省略で書かれているのだろうと分かりました。

そして、補酵素Aの中からなぜかS(硫黄)だけ外に出して書かれていることが不思議だなと思いました。

なぜS-CoAと省略して書くのだろう

補酵素AをなぜS-CoAと書くのか疑問でした。CoA以外は、それぞれ元素がきちんと書いてあったからです。一体、アセチルCoAは正確に書くとどのような物質なのだろうと思いました。

アセチルCoAの構造式

アセチルCoAを省略しないで書くとどうなるか、調べてみるとでてきました。しかし・・・。

アセチルCoA

アセチルCoA、この通り見ただけでうんざりしました。もともと化学は高校生の時に習って以来のことなので、もういいやと思いました。こんな複雑な物質は書けないし、とても覚えられません。

この物質が他の物質と反応するとそのあとどんな物質に変わっていくかなんて考えたくもありませんでした。

補酵素A(CoA)の構造式

ちなみに補酵素A(CoA)の構造式は次のように書き、アセチルCoAとなるときは、一番左のH(水素)が外れて、S(イオウ)から右がアセチル基に結合します。

CoA

CoA

S(イオウ)にH(水素)がついた-SHはチオール基と呼ばれます。

補酵素Aは反応の前後で変化しない

ところがあるとき、TCA回路の図を見ていて、「あれっ?」と気がつきました。

TCA回路には、最初にアセチルCoAが入り、オキサロ酢酸と反応してクエン酸ができます。そのときに、CoA(補酵素A)だけがTCA回路から出てくるのです。

TCA回路

TCA回路

この部分の反応を、詳しく調べてみました。すると下図のように書かれていました。

オキサロ酢酸とアセチルCoAのS-CoA(赤く塗りました)以外のものに、水(H2O)由来のOHを加えてみると、クエン酸ができます。

一方、水(H2O)由来のHは、S-CoAに結合して、HS-CoA(補酵素A)になり、反応に関係せずTCA回路の外に出ていきます。

つまり、アセチルCoAの、CoAは、アセチル基を運んでいるだけで反応の前後で変化しないものだったのです。補酵素Aは運搬役です。
オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

反応に関係しないからS-CoA

補酵素Aの構造式は複雑で、とても一度で覚えられるものではないですが、反応には関係せず、変化しないものです。それで、S-CoAと省略されて書かれるのでしょう。

そして、S-CoAと、補酵素Aの中からわざわざS(イオウ)を外に出しているのは、補酵素Aの中に一つだけあるチオール基(-SH)に結合するのだという目印のために書いているのでしょう。

では、アセチルCoAの本質とはなんでしょう?

アセチルCoAは酢酸

下図、左はアセチルCoAで右は酢酸(CH3COOH)です。水の中で補酵素A(CoA)が外れれば、そこに水酸基(-OH)がついて酢酸になります。酢酸は、料理に使うお酢の主成分です。

アセチルCoAと酢酸

つまり、アセチルCoAは、補酵素A(CoA)が酢酸を運搬するかたちだったのです。

お酢は調味料だから外から体に入って来るものだと思っていたのですが、まさか自分の細胞が酢酸を四六時中作っているなんて考えたこともありませんでした。

しかも、アセチルCoAはなかなか重要な物質なのです。

つい、アセチルCoAと書きましたが、その本質は酢酸なのでお忘れなく。

食べ物はアセチルCoAに変換される

食べ物はおもに糖質、脂質、タンパク質に分けられます。糖質はグルコース(ブドウ糖)になり、脂質は、おもに脂肪酸とグリセリン、タンパク質はアミノ酸に分解されます。

これらは、エネルギー源として代謝される場合、すべてアセチルCoAになります。

反芻動物の場合も例外ではありません。アセチルCoAは、ミトコンドリアのTCA回路(クエン酸回路)に入ります。そしてエネルギーに変わります。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように書かれていました。

反芻動物(そして、より低い程度ではあるが、他の草食動物)では,食べたセルロースは共生微生物の発酵によって短鎖脂肪酸(酢酸,プロピオン酸,酪酸)へと変換されるので,これらの動物の代謝は,短鎖脂肪酸を主要基質として利用するのに適したようになっている.

すべての消化物は,1つの共通した生成物,すなわちアセチル-CoAへと変換され,それからクエン酸回路で酸化される.

反芻動物は、でんぷんではなく草だけを食べて生きています。食物繊維がとても多く、ヒトは消化できません。

しかし、反芻動物は反芻胃に微生物がいてそれらを短鎖脂肪酸に分解します。短鎖脂肪酸は一番小さい酢酸に分解され、アセチルCoAとなって、TCA回路に入ります。

コレステロールやケトン体になる

たとえば、脂肪酸はβ酸化され、炭素2個ずつアセチルCoAとして切り離されて行きます。アセチルCoAは、TCA回路(クエン酸回路)に入る他、コレステロールやケトン体の合成に使われます。

β酸化によってできたアセチル-CoAは3つの運命をたどる.

  1. 解糖によって生じたアセチル-CoAとともに,クエン酸回路で酸化され oxidized てCO2とH2Oになる.
  2. コレステロール cholesterol やほかのステロイド steroid 合成のための前駆体となる.
  3. 肝臓においては,長期の絶食および飢餓時において重要なエネルギー源となるケトン体 ketone body (アセト酢酸および3-ヒドロキシ酪酸)の合成に利用される.

β酸化については、脂肪はエネルギーになるためにβ酸化されアセチルCoAまで分解されるという記事に書きました。炭素数が多い脂肪酸が炭素数2個のアセチルCoAを切り離されていくことを説明しました。

脂肪は、エネルギー源になります。1グラムあたり9kcalの熱量を持っています。これは1リッターの水の温度を9度上げることができる熱量です。炭...

アセチルCoAからコレステロールができるまでは、コレステロールの生合成はアセチルCoAからスタートするで書きました。コレステロールの形は、4個の環があり、脂肪酸とは全く違う形をしています。これもアセチルCoAからできているとは。

油とコレステロールは脂質ではありますが、別なものだと思っていました。しかし、コレステロールは、アセチルCoAから生合成されるのです。関係がな...

また、ケトン体については、脳でエネルギーとして使われるケトンについて調べてみたで詳しく書きました。

ケトンということばをよく聞くようになったのは、糖質制限ダイエットが流行してからです。 ケトンが化学用語だというのは、昔、共通一次試験で...

アセチルCoAはブドウ糖に戻らない

からだには面白い仕組みがあり、アセチルCoAの1つ前のピルビン酸や、TCA回路の中にあるオキサロ酢酸、脂肪を分解した時にできるグリセリン(グリセロール)から、ブドウ糖→グリコーゲンをつくることができます。

糖新生というのです。

いままで書いてきたように、アセチルCoAはすべての食べ物から作られエネルギー源になり、また、その他の物質をつくる材料になります。

では、ブドウ糖にも戻ることができるのではないかと思いますね。

ところが、これがだめなんです。ピルビン酸からアセチルCoAに変わる反応は、逆に進めない。

アセチル-CoAを生成するピルビン酸デヒドロゲナーゼの反応は不可逆であり,アセチル-CoA由来の2つの炭素単位がクエン酸回路に入っても、オキサロ酢酸が生じる前に二酸化炭素として2つの炭素原子は消失する.

このことは,アセチル-CoA(そして,アセチル-CoAを生じるいかなる基質も同様)はけっして糖新生には使われないことを意味している.

アセチルCoAからピルビン酸には戻れないのです。ピルビン酸からブドウ糖、グリコーゲンに戻ることができるのに、アセチルCoAになると、エネルギー源として使われるか、コレステロールになるか、脂肪酸になるか、ケトン体になるかなのです。

まとめ

アセチルCoAが酢酸だと分かってから、乳酸、クエン酸などが急に身近になりました。それまでは、みなサプリメントや調味料として外から摂るものだと思っていました。

ところが、酢酸も乳酸もクエン酸も、ヒトの細胞で四六時中作られている有機酸だったのです。それが分かってから、酒や味噌醤油などの発酵も、きっとヒトの細胞と似た仕組みで行われているのだろうと思うようになりました。

どうやら、生物は同じ仕組みで生きているのです。

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