ブドウ糖がTCA回路(クエン酸回路)に入る物質アセチルCoAとなるには、11個の反応が必要です。一方、脂肪酸からわずか4個の反応でアセチルCoAができます。脂肪はエネルギー源として優れています。
ブドウ糖が分解される解糖系の反応
以前、脂肪はエネルギーになるために脂肪酸がβ酸化されアセチルCoAまで分解されるという記事を書きました。
アセチルCoAは、ミトコンドリアのTCA回路(クエン酸回路)に入る物質です。脂肪酸は4つの工程でアセチルCoAとなりました。
一方、もうひとつのエネルギー源であるブドウ糖はどのように分解されてアセチルCoAになるのでしょう?早速、調べました。
ブドウ糖は炭素数が6しかありませんが、炭素数2のアセチルCoAになるまで、なんと11個の反応経路をたどります。
反応経路は、KEGGのGlycolysis / Gluconeogenesis(解糖系/糖新生)に出ています。構造式は、KEGGの反応経路から参照できるものを書きました。物質名は、より一般的な、教科書によく出ている書き方になるように細胞の分子生物学第4版(ニュートンプレス 2004)にならいました。
構造式を書いたのは、炭素数6から炭素数2まで、リン酸がついたり離れたり場所をかえたりしながら、炭素数を減らしてアセチルCoAになる様子を眺めるためです。
脂肪酸からアセチルCoAを作る方が簡単だ
見比べるまでもなく、脂肪酸からアセチルCoAを作る方がブドウ糖からアセチルCoAをつくるより簡単です。
ブドウ糖からアセチルCoAになるまで11個の反応を経て、やっとTCA回路(クエン酸回路)に入り、その後電子伝達系でATPが作られます。
ところが、脂肪酸からなら、わずか4個の反応でアセチルCoAが作られます。
ブドウ糖をピルビン酸まで分解する解糖系には、酸素を必要とせずにエネルギーATPを作ることができる特徴があります。
アセチルCoAがその後、電子伝達系でATPを作るには酸素が必要です。つまり、脂肪をエネルギー源とするには、酸素が必要です。
しかし、少ない反応経路でアセチルCoAを作ることができる脂肪は、エネルギー源として優れているのは間違いないでしょう。