なぜ食べた脂肪は太ることにあまり関係がないのか?

食物中の脂肪は小腸から吸収されますが、血中の遊離脂肪酸濃度によりコントロールされていて、多ければ吸収されません。また、食べた脂肪の脂肪酸は、すぐに細胞膜の単位になるリン脂質に使われます。油はカロリーが高いですが、食べる量もカロリーも炭水化物の方が多く、炭水化物が脂肪になったものが脂肪細胞に貯められます。そして、脂質は水に溶けないので、食べた脂質が100%吸収されることはありません。

バター

なぜ、糖質制限している時に脂質は好きなだけ摂っても太らないのかということがずっと頭に引っかかっています。何しろ制限がない、好きなだけ食べてよいというのです。なぜなのかどうしても知りたい。そう思って本を探しました。

炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】 植物vs.ヒトの全人類史を読みました。

本の中の1.「脂肪だけ」では太らない理由、「脂肪+糖質」だと太る理由に、実に興味深いことが書かれていました。

糖質制限して脂肪だけ食べても太らない

食品中の脂肪は皮下脂肪にも内臓脂肪にもならないと書かれています。

糖質制限について説明すると、決まって「脂肪を好きなだけ摂取しても太らないのはなぜか?高カロリーの脂肪が肥満の原因とならないのは不合理ではないか」という質問をいただく。

なぜ、脂肪を摂取しても太らないのか。理由は単純で、食品中の脂肪は皮下脂肪にも内臓脂肪にもならないからだ。(中略)

肥満とは要するに、脂肪細胞中の中性脂肪が増え、脂肪細胞が肥大することにより起こる現象だ。脂肪細胞に中性脂肪の蓄積を促すホルモンの代表格は、ご存知インスリンであり、インスリン分泌を促す糖質が肥満の唯一の原因だ。

逆に脂肪を摂取してもインスリン分泌は起こらないので、肥満にはならない。(中略)

さらに、食物中の脂肪は小腸から吸収されるが、吸収されるかどうかは血中の遊離脂肪酸濃度によりコントロールされている。血中遊離脂肪酸の濃度が低ければ脂肪は吸収されるが、遊離脂肪酸の濃度が正常値に達すると、腸管からの脂肪吸収はストップし、腸管内に残った脂肪は便と一緒に排泄される。

これは、血液中の遊離脂肪酸の溶存量には限界があって、それ以上は溶け込むことができないためらしい。つまり、脂肪たっぷりの食事をしても、それに含まれる脂肪が全て吸収されるわけではないのだ。

ラインマーカーを引いたところ。「食品中の脂肪は皮下脂肪にも内臓脂肪にもならないからだ」を読むと、「だから、そう書かれる理由を知りたいのですよ」という気持ちになります。しかし、ていねいに読み返しても、その理由は書かれていません。

ヒントになりそうなのは、もう1ヶ所ラインマーカーを引いたところ。小腸からの脂肪の吸収は血中の遊離脂肪酸濃度によりコントロールされているというところです。

なるほど、脂肪はすべて吸収されるわけでなく、血中の遊離脂肪酸濃度がその指標になっていることがわかりました。

細胞膜が食べた脂質を使う

なんとも歯がゆい感じが残り、ネットで記事を探しまわりました。

すると医者が断言する「脂肪を食べても太らない3つの理由」という記事が見つかりました。この記事は本の紹介記事でもあります。医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70という本です。

この本、少し前に読んだのですが、心に引っかからず、以下の話は記憶に残っていなかったです。

医者が断言する「脂肪を食べても太らない3つの理由」
「肉の脂身なんて絶対に残す」という人も多いだろう。われわれの多くは脂肪こそ避けるべきものと教えられてきたからだ。しかし、最新の研究では脂肪はもっと摂るべきだし、脂肪を食べても太らないことがわかってきた。「脂肪は太る」は感覚的なもので、嘘なので認識を変えてほしい。今回は『医者が教える食事術2 実践バイブル』の中から、食事...

まず、脂肪を食べたらそれがすぐに皮下脂肪や内臓脂肪になるというように体はできていません。脂質には必須の栄養素として大切な使い道があるのです。

脂質は1人あたり約37兆個もある人間の細胞をつくるのに欠かせません。細胞膜はリン脂質という脂肪によってつくられ、しかも絶えずつくり変えられているため脂質はそれだけ必要とされます。

脂質は各種ホルモンの材料として使われます。プロスタグランジンなどの、ホルモンに似た情報伝達物質にも使われます。多くの人が気にしている脂肪の一種であるコレステロールは、食べ物からの摂取では足りず肝臓で大量につくられていることもわかっています。それだけ必要とされているわけです。

細胞膜はリン脂質を単位にしていますが、リン脂質には必ず脂肪酸が2本入っています。また、プロスタグランジンは、リン脂質にある脂肪酸が切り出されて使われています。

炭水化物に比べてそんなに脂肪を摂っていない?

脂肪を70g摂るのはずいぶん多いなと思います。しかし、炭水化物(糖質)は男性なら400gも摂っています。カロリーで比べると、脂肪は、9×70=630kcal。炭水化物は、4×400=1600kcalです。炭水化物の方が量もカロリーも多いのです。

次に、私たちはそんなに脂肪を摂っていないということにも気づかねばなりません。日本人の1日の平均脂肪摂取量は、男性で74グラム、女性で56グラムです。このわずかな量の脂肪は、細胞膜やホルモン作成に消費されてしまい、余って体につくことはないでしょう。

それよりも、男性なら平均でも400グラム(脂肪の5.4倍です)近く食べている炭水化物(=糖質)こそ、余って脂肪に変わり貯蔵され太るのです。

この話を読むまで、脂肪と炭水化物の1gあたりのカロリーは知っていましたが、1日どのくらい摂っているか比べたことが有りませんでした。

確かに炭水化物の方がずっと多く、油はずっと少ないから気にしなくてもよいのだといわれるとそうかなと思います。

特に、炭水化物が脂肪に変わり貯蔵されるのが太る原因なのだと説明されてもピンと来なかったのですが、量の違いを説明されると、炭水化物が脂肪に変わってそれが脂肪細胞に貯められると、結構な量になるということがわかりました。

脂質は腸から吸収されにくい

さらに、水に溶けない脂質は腸から100%吸収されません。ミセルにくるまれて吸収され、その後リポタンパクとして水に混ざりながら体内を移動したとしても、もともと水に溶けないですから吸収されにくいのです。

最後に、脂質には吸収されにくい性質があります。炭水化物やタンパク質はブドウ糖やアミノ酸に分解され、ほぼ100%完全に体内に吸収されます。しかし、脂肪は水に溶けにくく腸から100%吸収するのは難しい栄養素なのです。

とくに肉やバターの飽和脂肪酸は吸収効率が悪く、大量に食べても体内に取り込むこと難しいということがわかっています。さらに、コレステロールも同様に、吸収効率は良くありません。つまり、脂肪は食べ過ぎても全部体内に吸収されず便に出てしまうのです。

以上の理由から、一般的な日本人の食事なら脂肪を摂取して太ることはないので安心して肉の脂を食べてください。

食べた脂肪は体の中ですぐに使われる

この本の「細胞膜はリン脂質という脂肪によってつくられ・・・」以下を読むうちに、だんだんわかってきました。

脂肪が体の中に入ってくると、すぐに(優先的に)脂肪細胞に貯蔵されるのではなく、どうやら体の中で使われるようです。

以前、脂質の代謝について調べて書きましたが、小腸から入って来た「食べた」脂肪は、リポタンパク質にくるまれカイロミクロンとして血液中を運搬されて行きます。各組織に配られるのは、脂肪が分解された脂肪酸なのでした。

80%は心臓や筋肉や脂肪組織など各組織に配られ、20%は肝臓に行きます。

カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配る
小腸細胞内にミセルとして入ってきたトリグリセリド(中性脂肪)とコレステロールは、今度は、リン脂質とアポタンパク質からできたリポタンパク質にくるまれ、血液中を流れカイロミクロンとして各組織へトリグリセリド(中性脂肪)を運搬します。もう少し...

上の文章中にでてきた、細胞膜を構成するリン脂質に必要なのは脂肪酸であり、プロスタグランジンは、リン脂質から切り出された多価不飽和脂肪酸を材料に作られています。これらの脂肪酸は頻繁に入れ替えられているのです。

NOTE

食べた脂肪が体につきにくいといわれるのは、脂肪は水に溶けないので、腸から100%吸収されるわけではないこと。また、血中の遊離脂肪酸が多いと腸からの吸収が抑制されます。

また、食べている量は、圧倒的に炭水化物の方が多いので、炭水化物が脂肪になったものが脂肪細胞に貯められると考えた方がよいこと。

さらに、食べた脂肪の脂肪酸は、細胞膜の部品として使われます。

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