ゆるい糖質制限はこれからの標準になるのではないか?と考えていたら、真島康雄先生が、糖質制限をすると動脈硬化が進むと書かれていました。糖質制限すると油や油で調理したものを余分に摂りますが、食べた油はカイロミクロンが80%程度、組織、心臓、筋肉に運びます。食べた油が多ければカイロミクロンも増え、それが、プラークのもとになります。しかし、ちょうどよいところがあるのではないかと思うのです。
以前、「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因動脈硬化は自分で治せる」を読んだという記事を書きました。
著者の真島康雄先生にとても興味を持っています。説明が理にかなっていて、わかりやすく納得できるのです。多分、中学生でもそう思うのではないかな。
糖質制限すると動脈硬化が進む
最近、ゆるい糖質制限の本を読んでいて、これからの時代、この食事法はスタンダードになるかもしれないなと思っていました。ふと、真島先生はどのように考えられているのかなと思って、先生のサイトを読みました。
真島先生は真島消化器クリニックのサイトを運営されていて、その中に、脳梗塞・心筋梗塞の予防法があり、そこにたくさんの記事が収められていて、さらに新しい記事も追加されています。
いくつか糖質制限食に関係しているものがあり、読んでみると、全て糖質制限すると動脈硬化が進むという内容でした。4つあります。
「糖質制限食」開始から3年2ヶ月後に脳梗塞になった
もとの記事は、「糖質制限食」開始から3年2ヶ月後に脳梗塞になり、食習慣が発病を早めたと思われる症例です。年齢などこの記事が書かれた当時のものです。読みやすくするために、短くしてあります。是非、もとの記事もお読み下さい。
71歳の男性です。20年前から糖尿病で薬を飲んでいます。4年前からコレステロールが高いと指摘されました。「糖質制限食」を勧める本を読み、信じ、そしてその通りに2008年11月から実行し、それから約3年2ヵ月後に半身麻痺の脳梗塞になりました。特に、この2年間は「糖質制限食」を徹底して行い、トンカツをかなり食べたとのこと。
飲食歴について。55才まで日本酒3~4合とビール750mlをほぼ毎日飲んでいました。現在は、ビール350mlを3~4日/週。また、50歳まで牛乳コップ1杯をほぼ毎日。肉は好き。甘い物は好きでない。野菜は好きでない。揚げ物は普通。
それに対して先生のコメントは以下。
考察:
今までの食習慣と血管プラークの石灰化の程度から、「糖質制限食」を行う前から脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4の動脈硬化は間違いなく存在していたと思われます。ただし、石灰化していないプラークが写真以外にも多く存在し、最近のプラークの堆積を伺わせる所見も存在しました。
結論:
元々、血管プラークが多く堆積していたのに、“A1cを下げる目的の治療に効果がある”として”、劣化脂質を非常に多く含む“トンカツ”をかなり頻回に食したために、プラークの堆積速度が速まり、脳梗塞の時期を早めた可能性は否定できません。
石灰化していないプラークとは、最近たまった新しいプラークという意味です。その原因がトンカツにあるだろうと考えられているのです。また、わざわざ50歳まで牛乳1杯を毎日飲んでいたと書いてあるのは、真島先生は油を減らした方がよいと考えているからです。
糖質制限食を続けているために、動脈硬化が急速に進行した?
もとの記事は、糖質制限食を続けているために、動脈硬化が急速に進行したと思われる1症例。です。
66歳の男性です。身長172cm、体重62Kgで、BMI=21.0。5年前から「ご飯を食べない糖質制限」を信じて実施中。アルコールは3日に1日程度。ビール170cc+ウイスキー水割り1杯。運動はかなりやっていて、体脂肪は少ないです。
測定してみると、頸動脈以外の血管にたっぷりとプラークの堆積を認め、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4であった。Cr上昇=腎機能障害は血管プラークが腎動脈に溜まって腎臓の濾す能力低下を招いたと考えられる。したがって、糖質制限食により腎機能低下を来した可能性も考えられる。
Crとは血清クレアチニンの値のことです。
この症例のプラーク悪化の背景について。2010年から糖質制限食をやっていて、ご飯を食べなくやせるので、豚カツなど肉や脂、油いため、揚げ物を意識して沢山食べていました。幸いにも肉は好きだし。外食などで牛ステーキを週に3回以上。焼肉を週に2回。豚カツを週に2回など食べていました。
先生のコメントです。
私のつぶやき:
「医師が書いている糖質制限食を勧める書籍」を信じ・・・A1c低下や体重減少・・さらに体脂肪率低下・・に価値観を求める人達は・・その結果に心酔し・・ でも・・血管プラーク(動脈硬化)は粛々と進行し・・血管病で倒れれば・・会社は倒産。。。 家族と従業員・その家族の境遇は・・どんな状況になるでしょう・・・引き返すのは今ですが・・・
この方は、体重も肥満度も問題がなく、飲み過ぎでもなく、体もよく動かしています。しかし、肉と脂肪を取り過ぎると、まだ病気になっていないですが、動脈硬化が進み、危険な状態になっていたんだなと思いました。
お酒をあまり飲まず、とても健康的な生活を送っているように見えます。揚げ物と油炒めを食べていると動脈硬化につながるのかと、読んでいて一番ショックを受けたケースです。
糖質制限食を8年続けて脳梗塞になった
もとの記事は、糖質制限食の開始8年で脳梗塞になった1例と、10ヶ月で脳梗塞になりかけた1例です。1つの記事に2例あるので1例ずつ紹介します。
最初は、糖質制限食を8年続けて脳梗塞を起こした事例です。
46歳の男性です。糖質制限食を8年して脳梗塞を来した症例です。2008年5月(38歳)頃に糖尿病指摘され、この頃から糖質制限食開始。(その後は糖尿病の悪化なし)
2014年4月頃サラダにオリーブオイルを使用開始。
2016年3月、起床時に左手のしびれがあり、昼過ぎに左半身のしびれに拡大、タクシーで救急病院受診。頭部MRI=脳梗塞+。体重77Kg、血糖=180、A1c=9.5 糖尿病薬開始。
この事例について先生はこのように考えられています。
1)この症例は・・巷に流行の糖質制限食を8年間続け、6年目にはオリーブ油使用に傾くなど・・血管プラークを堆積させる食習慣によって・・脳梗塞を来した症例であることが強く考えられる。
2)この症例は38歳という若さで糖質制限食を開始したために・・糖質制限前のプラーク堆積が少なかったと想定され・・この症例では・・8年という長い歳月が・・脳梗塞までに必要でしたが・・50~60歳以上の者が・・このような油もの、脂ものを制限しない糖質制限食ダイエットをすれば・・1~3年以内に脳梗塞・心筋梗塞に・・数年後に認知症になる可能性が大になるものと考えられる。
この方の場合、糖質制限を始めてオリーブ油使用以外に、どんな食生活の変化があったのかもう少し知りたいところです。
糖質制限食を始めて10ヵ月で脳梗塞になりかけた
次は、糖質制限食を始めて10ヵ月で脳梗塞になりかけた事例です。
68歳の男性です。2016年6月まで朝はパン食でした。毎朝、ロールパンにバターをつけて。そして、毎朝牛乳コップ1杯と牛乳から作ったヨーグルト1個を食べていました。アルコール歴は、2016年6月までビール350mlと日本酒1.5合。6月からビール350mlx2本でした。
2015年7月まで健康そのものでした。BP(血圧)=135/75前後で安定していました。
2015年8月頃、糖質制限ダイエット本を購入し、糖質制限食を開始しました。肉と脂・油ものが増えました。
2015年12月頃から血圧上昇が見られるようになりました。(BP=150-160/85-95位)
2016年3月頃、2回も入浴後に200以上に血圧上昇し薬を飲む。
2016年6月初旬、朝の起床時にふらつき感があり、真っ直ぐに歩けなくなり、タクシーで救急病院へ入院。脳MRI=異常なし。
先生は次のようにコメントされています。
この症例は腹部大動脈が石灰化を伴うプラークにより、高度な腹部大動脈狭窄を認め、家族歴などからも、日頃からプラークが溜まりやすい食習慣(食習慣点数=363点)であったことがうかがえます。T-max=14.79 C-max=3.72 からも糖質制限をしないでも脳梗塞・心筋梗塞の前状態であったと思われます。
この方の場合、血圧上昇が著しいです。
油をたくさん摂るとカイロミクロンが増える
以前、読んだ「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因動脈硬化は自分で治せる」には、真島先生が、動脈硬化の原因であるプラークは、比重の重い超微粒子脂肪滴であると書かれています。
油が多いものを食べると消化され小腸から吸収されますが、油がそのまま吸収されるわけではありません。水と油が混ざらないように、血液と油は混ざらないので、カイロミクロンと呼ばれるリポタンパク質にくるまれてリンパ管から血液に入ります。
カイロミクロンは組織、心臓、筋肉に食べた脂肪由来の脂肪酸を配ります。食べた脂肪の80%(本によっては90%)が配られるということなので、比重の重い超微粒子脂肪滴に特に関係があるのはカイロミクロンではないかと思います。
カイロミクロンは、油を含んだもの油で調理をしたものを食べれば必ずできるものです。そして、もちろん、油を食べれば食べるほど、それを輸送するためにたくさんできます。
油をくるんだカイロミクロンが血管をかなりのスピードで何周も回る間に、血管の分岐点にぶつかったり、酵素によって中性脂肪が分解され脂肪酸が引き抜かれて小型化し、それが、血管の分岐点の内皮細胞のすき間から内部にたまってしまうとプラークになるというのです。
食べた油が多いほど、カイロミクロンが増えます。そして油がどんな種類のどんなものでも関係ありません。
そうすると、上で紹介した事例が妙に納得できます。
NOTE
今や、確実に支持者の増えている軽い糖質制限食。私も始めようかと思っていたところです。といっても、単に、ご飯の量を減らすだけなんですけど。
しかし、高密度で超微粒子の脂肪滴がプラークであると考える真島康雄先生は、動脈硬化が心配な人は、油をできるだけ減らすことをすすめています。
糖質制限をすると、体重も減り、ヘモグロビンA1cも低くなります。一見よいことだらけなのですが、糖質を減らした代わりに余分に摂るようになる脂肪が、プラークを増やすことになるという説明でした。これもそうなのかもしれないと思えます。
しかし、血糖値スパイクを避けるためのゆるい糖質制限が悪いことには思えません。ただ、確かに油のとり過ぎは、昔からの習慣と比較するとあまりよいことには思えません。
ゆるい糖質制限はしたいが、動脈硬化の原因になるプラークは増やしたくない。
「ちょうどよいところ」があるように思います。
糖質制限中の方は、油について制限なしと考えているとよくないかもしれないので、こういうこともあると思っていただけるとよいです。
糖質制限と油についての他の記事は、糖質制限と油についてをご覧下さい。