脂肪を燃焼させるならオメガ3をとってオメガ6を制限して運動すること

毎日オメガ3の油を飲んでいるとダイエットできるなんて都合のよいことはありませんが、オメガ3の脂肪酸は燃えやすいらしいです。以前、EPA・DHA、α-リノレン酸は優先的にエネルギーに変わるという記事を書きました。

しかし、実際のところはどうなのか知りたいと思っていました。使う油を全部オメガ3の油にすると、実際に運動したときによく燃えてくれるのでしょうか?

この記事ではそのことについて書きます。

走る

エネルギー源として脂肪を燃焼しながら運動したい

今回は、4週間の n-3系多価不飽和脂肪酸摂取が運動時の脂質代謝に及ぼす影響という論文を読ませていただきました。

運動するときは、優先的に糖がエネルギーとして使われます。しかし、肝臓や筋肉にためた糖であるグリコーゲンはフルマラソンを走る切るまでは持たないそうです。そこで、この論文では、運動時に脂質代謝能力が高まれば、長時間持久力を維持することができるのではないかと考え、4週間n-3系多価不飽和脂肪酸を摂取すると、脂質代謝能力が上がるという仮説を立てて実験しました。

この論文は、競技者のために書かれたようですが、運動してダイエットする人たちに役に立つのは、運動中に脂質代謝能力が上がるかどうかということです。もし、脂質代謝能力が上がるなら、お腹についた脂肪が燃焼してくれるようになります。

以前、脂肪は寝ていても運動していても使われているを書いた時に、運動中は運動強度が上がるにつれ、脂肪が使われにくくなることを知りました。一般的傾向として、運動中は脂肪は燃焼しにくいのです。

実験の概要

行われた実験をざっくり説明します。13人の男子大学生に対して最初に最大酸素摂取量を測定し、有酸素運動能力を調べます。これは私も学生の時にやったことがありますが、とても苦しいです。

そして、有酸素運動能力の高い方から交互に、n-3(オメガ3)系脂肪酸を摂取する群6人と、オリーブオイルを摂取する対照群7人の2つにグループ分けをしました。

魚油とオリーブオイルの比較

n-3系脂肪酸として魚油6 g/日(EPA:1,700 mg、 DHA:2,250 mg、60 kcal)がカプセルで与えられ、対照群では、オリーブオイル6 g/日(55 kcal)を、カプセルで与えられました。これを4週間続けます。

魚油とオリーブオイルを飲み始める前と後に、運動します。つまり使用前使用後の違いを比較するためにデータを取るのです。

運動は2種類ありました。まず、エルゴメーター(自転車漕ぎの機械)を使って各人の最大酸素摂取量に対して、65%に相当する強度での60分間のペダリング運動を行いました。これは有酸素運動能力に差がある各人へ、相対的に同じ強度の運動をしてもらったということです。2分間の休憩後、次に5キロのタイムトライアルも行われました。こちらは全力疾走になります。

このとき、運動開始から15、30、45、60分の合計4回の時点で血液を採取しました。また、実験時はマスクを装着しているのでVO2(酸素摂取量)、VCO2(二酸化炭素産生量)、VE(換気量)、RER(呼吸交換比)が測定されました。

RER(呼吸交換比)を測定する

RER(呼吸交換比)とは、酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことです。

例えば、ブドウ糖を燃焼させるときは、次のような化学反応式になります。

C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O+エネルギー

ブドウ糖1モルを燃焼させるのに、酸素分子(O2)6モル、できてくる二酸化炭素(CO2)は6モルなので、6/6=1になります。

では、3本の脂肪酸がすべてパルミチン酸だとして、中性脂肪(TG)を燃焼させるときは、次のような化学反応式になります。

2C51H98O6+145O2→102CO2+ 98H2O+エネルギー

3本の脂肪酸がすべてパルミチン酸の中性脂肪を1モル燃焼させるには、酸素分子(O2)145モル、できてくる二酸化炭素(CO2)は102モルなので、102/145=0.703になります。

このように一般に脂肪を燃焼させると、呼吸交換比はブドウ糖の場合より小さくなります。

実験の結果

実験の結果、 4週間n-3系(オメガ3)脂肪酸を摂取していると、60分間のペダリング運動時の血清で測定された遊離脂肪酸とグリセリン濃度の増加を亢進させることがわかりました。また、RER(呼吸交換比)を低下させることもわかりました。

魚油を摂った方が脂肪が利用されやすくなる

これらは、長時間運動する時に、脂肪分解と脂肪利用が増えていることを示唆しています。

また、n-3系脂肪酸を与えた群では、4週経過後に安静時のRER(呼吸交換比)が低下する傾向がみられました。もともと安静時には脂肪が燃焼されるのですが、使用前、つまりn-3系脂肪酸を毎日飲むようになる前に比べて、より多く脂肪が使われるようになったことを意味します。

オメガ6の脂肪酸を控えると脂質が代謝される

また、本文で引用されている実験例では、こんなことが書かれています。

健常な男女17名を対象に,EPAおよびDHAの摂取に加えてn-6系脂肪酸の摂取を控え,n-3/n-6比を上昇させる栄養介入を10週間実施した研究では,血中アディポネクチン濃度の増加が認められた.

アディポネクチンは血中濃度が肥満度と負の相関を示すアディポサイトカインであり,脂質代謝と密接に関わっている.

本研究では,アディポネクチンの測定は行っていないが,n-3 PUFA群でみられた安静時および運動時の脂質代謝の亢進には,アディポネクチン濃度の上昇が関与しているかもしれない.

アディポネクチンの血中濃度が大きくなると肥満度が下がるという関係のようです。

アディポネクチン

アディポネクチンは、脂肪の燃焼や糖の取り込みを促進するホルモン様の物質。小型の脂肪細胞から多く分泌され、脂肪細胞が大きくなると分泌が低下するとされる。肥満や糖尿病との関連が注目されている。(出典

文中、アディポサイトカインとは、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質を総称していいます。

つまり、n-6(オメガ6)系脂肪酸の摂取を控えてn-3/n-6比を上昇させるようにn-3系脂肪酸をとるようにすると、アディポネクチンの濃度が上がり、脂肪を燃焼させる働きが強くなるということでしょうか。

この実験でもn-6系脂肪酸の摂取を控えるよう に指示をしたので、その結果、実験前と後でn-3/n-6比は約5倍になったそうです。

NOTE

この論文を読むと、まず、オリーブオイルが対照群になっているので、オリーブオイルは、よりよく脂肪を燃焼させるためには役に立たないことが分かりました。

そして、オメガ3とはいっても実験に使われたのはEPAとDHAを含んだ魚油でした。植物油のオメガ3脂肪酸は、α-リノレン酸ですが、この実験と同様の結果が得られるかどうかは分かりません。ただ、α-リノレン酸は変換率は高くはないですが、体の中でEPAとDHAに変わっていくのは確かです。

さらに効果を期待するには、オメガ3のα-リノレン酸が主成分の油をとり、オメガ6、リノール酸を意識してとらないようにすることです。リノール酸を減らすのはなかなかむずかしいです。納豆を100g食べると、5g程度入っています。オメガ6リノール酸が多い油と食品ランキングをご覧下さい。

また、リノール酸が豊富な大豆油は安くていろいろなものに使われています。

市販のマヨネーズやドレッシングを使わない。クリームなど脂肪分の多いお菓子を食べない。お店で揚げ物を食べない。揚げ物を買ってこない・・・。などなど決意が必要です。

そして、なにより運動することが必要です。

その他のオメガ3の効果については、オメガ3の効果についてをお読み下さい。

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