揚げ油でできるアクロレインはα-リノレン酸由来だって

α-リノレン酸が含まれる油を加熱すると、150℃程度の温度から、二重結合を1個持った炭素数3のアルデヒド、アクロレインができるようになり空気中に放出されます。体には有害で、天ぷらを揚げ続けると気持ち悪くなる「油酔い」の原因物質です。

てんぷら

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α-リノレン酸を加熱するとアクロレインができる

このブログを書くようになってから、揚げ物を食べる回数が減りました。しかし、毎月1回必ず行く居酒屋さんではから揚げを注文します。これはおいしいので特別です。それ以外は、本当に食べなくなりました。

美容と健康のための 植物オイル・ハンドブック(東京堂出版 2012)という本を読みました。

揚げ物をするときに、値段が安いのでサラダ油を使う方は結構いらっしゃると思います。サラダ油は大豆油となたね油のブレンドです。大豆油もなたね油もオメガ6のリノール酸が多いですが、オメガ3のα-リノレン酸も入っています。

α-リノレン酸は加熱すると酸化するので加熱してはいけないといわれますが、揚げ物に使うくらい加熱するとアクロレインという物質を作ると書かれていました。この記事ではアクロレインについて説明します。

アクロレインとはどんな物質か

アクロレインは2番目の炭素が二重結合になった炭素数3のアルデヒドで、毒性があり、油を臨界温度以上に加熱すると出てきます。

この本には次のように書かれていました。

アクロレインはグリセロールから派生した有機物(脂肪物質の第一アルコール)で、刺激臭のある可燃性揮発液体です。・・・アクロレインは第一次大戦中(1914~1918年)に窒息ガスとして使われました。

窒息ガスとは穏やかではないですね。どんな物質なのか調べてみました。構造式は下図の通りです。小さい分子なので、炭素(C)と水素(H)を省略しない構造式も一緒に書きました。

アルデヒドである

この本にはアルコールと書かれていましたが、アルコールにはヒドロキシ基(-OH)がつきます。構造式を調べてみるとこれはアルデヒド(-CHO)です。

アクロレイン

ウイキペディアのアクロレインに詳しく説明がありました。

2-プロペナール (2-propenal)とも呼ばれます。なるほど。2番目の炭素に二重結合を1つもち、炭素数3個のアルデヒドということですね。

分子式は C3H4O、示性式は CH2=CHCHO、分子量は 56.07で小さいです。融点は-87℃で、沸点は53℃。

刺激臭を持つ無色から黄色の液体で、空気中では酸化されやすく非常に反応性に富む物質だということです。毒性が強く、可燃性も強いです。

アクロレインは、油の臨界温度以上に熱せられると発生してきます。

臨界温度とは

油の臨界温度は生体に有害な派生物ができはじめる温度と書かれていましたが、一般には、気体を加圧しても液化しない温度のことで、α-リノレン酸を比較的多く含む大豆油では150℃です。

油の臨界温度は、生体にとって有毒な派生物ができはじめる温度です。油は3本の脂肪酸とグリセリンからできていて、形は決まっています。いろいろな油が売られていますが、それぞれの油の性質を決めるのは脂肪酸です。

油の臨界温度は、油の脂肪酸組成によって変わります。

天ぷらを揚げる温度より低い

天ぷらを揚げるのは180℃くらいがよいと決まっていますが、油には関係ありません。美容と健康のための 植物オイル・ハンドブックに出ていた臨界温度の表です。

天ぷらを揚げるとき、180℃にするのがよいといわれますが、サラダ油を使うと考えると150℃からアクロレインが発生し始めます。

油名 臨界温度
ピーナッツ油 220℃
コーン油 140℃
ウォールナッツ油 140℃
オリーブ油 210℃
パンプキンシード油 140℃
グレープシード油 150℃
セサミ油 150℃
ソヤ油 150℃
サンフラワー油 160~170℃

セサミ油はゴマ油で、ソヤ油は大豆油で、サンフラワー油は、ヒマワリ油です。この本は、翻訳された本なので、少し表記が違います。

オリーブ油とピーナッツ油が突出して臨界温度が高いです。臨界温度が低い油には、α-リノレン酸が比較的多く含まれています。ゴマ油は酸化にはとても強いのですが、アクロレイン発生にはあまり関係がないようです。

本によれば、フランスでは、行政当局はα-リノレン酸含有量が2%を超えない油を揚げ物用油として政令で許可しています。このような油のラベルには、「揚げ物・調味用植物油」と表記されます。そして、α-リノレン酸が2%を超える油には、「調味用植物油」と表記されます。

この本は、日本人が書いたものでなく、フランス人が書いた本の翻訳なので、念のため、臨界温度について一般的な意味を調べました。

気体は通常加圧することによって液化するが,ある温度以上では液化しない.その加圧しても液体にならない温度で,最も低い温度.

(出典:臨界温度

アクロレインはα-リノレン酸からできる

揚げ物油についてα-リノレン酸含有量を問題にしているのに、アクロレインはグリセリン(グリセロール)から出来ると思われていたようですが、2013年6月27日の東京工科大学の記事で、加熱調理中に気分が悪くなる「油酔い」の発生メカニズムを解明。飲食店など調理現場の環境改善に期待というのがありました。

記事の内容は概要はこの通りです。

「油酔い」の原因物質である「アクロレイン」は、従来グリセリンから生じるとされていましたが、実際は、油脂中のリノレン酸が空気中の酸素により酸化されて生じるヒドロペルオキシドがさらに高温で酸化を受けた後、分解して「アクロレイン」が生じることを初めて証明しました。

油酔いを分からない人も多いと思います。昔、バイトした大きな山小屋では、夕食に必ず天ぷらを出していました。何百人も泊まる小屋だったので、たくさん天ぷらが必要になります。ずっと揚げていた人は、よく「気持ち悪い」といってました。夕食を食べられなくなる人もいました。

加熱調理中に生じる「アクロレイン」の量は油脂の種類によって大きく異なり、ナタネ油や大豆油で多く、逆にコメ油やハイオレイックヒマワリ油で少なくなりました。

すなわち、油脂中のリノレン酸(炭素数が18で、二重結合を3つ持つ、人の身体にとって必要な必須脂肪酸)の含有率が、加熱時の「アクロレイン」の生成と悪臭との間に非常に高い相関性のあることが明らかになりました。

これは、「アクロレイン」がグリセリンの熱分解ではなく、リノレン酸であることを証明した点で、これまでの食品科学の教科書に記載されている内容を覆す画期的な発見であると言えます。

記事にナタネ油や大豆油で多くなると書かれているので、揚げ物をするときは、安いからといってサラダ油は使わない方がよいかもしれませんね。使うなら換気をしましょう。ハイオレックヒマワリ油の脂肪酸は、ほとんどオレイン酸です。

肝心の揚げ物はどうなのか調べてみましたが、アクロレインの影響については出て来ませんでした。もっとも、アクロレインの融点は53℃なので、サラダ油を加熱して臨界温度の150℃を超え180℃まで加熱している間にアクロレインができても片っ端から蒸発していきます。

NOTE

α-リノレン酸が多い、オメガ3の油で揚げ物をする人はいないと思います。しかし、てんぷら油にもα-リノレン酸は含まれています。

今まで、あまり調理中に加熱した油からできてくる物質について考えたことがなかったのですが、天ぷらを揚げ続けて、「気持ち悪い」と感じるようになることは、きっとあまりよいことではないと思います。

家庭の料理程度では問題にならないと思いますが、仕事として加熱した油のそばに居る方は、アクロレインのことを知っておいた方がよいと思いました。

年齢的なこともありますが、油の過酸化のことを知ると揚げ物を食べる前に自主規制してしまいます。もちろん、目の前にあればおいしくいただきますが、本当に食べなくなりました。

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