VLDLからコレステロールを配るLDLへ

この記事では、食べ物からではなく、肝臓で作られたコレステロールと中性脂肪(TG)がどのように組織に配られるのか。VLDLができ、LDLに変化し、LDLが肝臓に戻ってくるまでを説明します。

この記事は、カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配るの続きです。もし、お読みでなければ前記事に戻っていただけます。

カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配る
小腸細胞内にミセルとして入ってきたトリグリセリド(中性脂肪)とコレステロールは、今度は、リン脂質とアポタンパク質からできたリポタンパク質にくるまれ、血液中を流れカイロミクロンとして各組織へトリグリセリド(中性脂肪)を運搬します。もう少し...

目玉焼き

カイロミクロンは、食べたものから中性脂肪(TG)を体の中で配るための仕組みでした。ほとんど配り終わると、残った中性脂肪(TG)とコレステロール(エステル)は肝臓に送られてきます。

肝臓では、中性脂肪(TG)とコレステロール(エステル)は加水分解され、代謝されます。つまり、中性脂肪は、脂肪酸とグリセリンになり、コレステロールエステルは、脂肪酸とコレステロールになります。

また、肝臓では、コレステロールと中性脂肪が合成されています。それを組織に送り届けるのがVLDLであり、VLDLからトリグリセリド(TG)を配り終わって、次にコレステロールを配るのがLDLです。

LDLは、悪玉コレステロールといわれる、おなじみのものです。

VLDLはトリグリセリドを組織に配る

VLDLは、超低密度リポタンパク質のことです。Very Low Density Lipoproteinの略字です。密度が出て来ました。

密度とは

密度って、中学生?の時、習いましたね。単位は、g/cm3でした。体積(cm3)あたりのグラム数を表しています。

  • 水の密度は、1g/cm3でした。
  • 脂肪組織の密度は、0.9g/cm3でした。
  • コレステロールの密度は、1.05g/cm3です。

コレステロールの密度は水より大きいです。

密度はリポタンパクに含まれる脂肪とコレステロールの割合による

VLDL(超低密度リポタンパク質)は、リポタンパクの中に含まれる脂肪がとても多く、コレステロールが少ないので、密度がVery Lowなのです。

LDL(低密度リポタンパク質)なら、脂肪の割合が減ったので、密度が少し大きくなり、Low なのです。

VLDLの説明に戻りましょう。下図を見ながら読み進めてください。説明は、星薬科大学のサイトにある脂質異常症(高脂血症)で学ばせていただきました。図は、脂質異常症(高脂血症)とハーパー生化学原書23版を参考にしました。

微妙に違っている部分がありましたが、脂質異常症(高脂血症)の説明に合わせて描きました。

VLDLからLDL

VLDLからLDL

未完成のVLDLは、リン脂質で構成された球状の膜内にトリグリセリド(TG)やコレステロールエステルを多く含み、Apo B-100というアポタンパクが結合したものです。

  • 未完成のVLDLが肝細胞から血液中に入ると、カイロミクロンの場合と同様に、HDL(善玉コレステロール)からApo EとApo C-IIというタンパク質を受け取り、VLDLとなります。

HDLはいわゆる善玉コレステロールのことです。

  • カイロミクロンの場合とほぼ同様に、Apo C-II(図中C-2と表記)によって脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)が活性化され、トリグリセリド(TG)は、脂肪酸とグリセリンへ分解されます。

アポタンパクのApo C-IIが、脂肪細胞のLPLを刺激して活性化させるところがポイントです。VLDLからトリグリセリド(TG)が脂肪細胞に移動するのではなく、トリグリセリド(TG)が脂肪酸とグリセリンに分解され、脂肪酸が、遊離脂肪酸として、脂肪細胞に移動します。

  • 脂肪酸は脂肪細胞内においてグリセリンと再結合し、トリグリセリド(TG)となって貯蔵されます。
  • 脂肪細胞へ取り込まれない脂肪酸はアルブミンと結合し、血液中を循環した後に各組織へ運ばれることになります。

血液中を脂肪酸が移動する時に運搬するのは、血清アルブミンです。血清アルブミンを読んでいただければ、よくお分かりになると思います。

  • このようにVLDL中のトリセリドは分解され、Apo C-II とApo EはHDLへ戻り、LDLとなります。

VLDLがトリグリセリドを放出するとコレステロールを配るLDLになる

VLDLがたくさん中にあるトリグリセリド(TG)を放出すると、LDLになるのが大切なところです。ここから、やっとコレステロールを配り始めます。

  • VLDLとLDLの中間体の粒子をIDLと呼びます。VLDLからトリグリセリドが抜かれた粒子がLDLとなるので、この粒子にはコレステロールエステルが多いです。
  • LDLは各組織へコレステロールを運搬することになります。LDL上のApo B-100は各組織のLDL受容体へ結合し、エンドサイトーシスによってLDL粒子そのものが細胞内へ入り、細胞内においてリソソームによって脂肪酸、コレステロールに分解されることになります。

アポタンパクのApo B-100は、各組織のLDL受容体に結合します。これは次のエンドサイトーシスのスイッチを入れているようなものです。

エンドサイトーシスとは、LDL粒子が、細胞膜を透過するのではなく、細胞膜がくぼんで行き、それに包まれるように細胞の中に取り込まれる現象です。細胞内では、細胞小器官のリソソームの酸性環境で脂肪酸、コレステロールに分解され、細胞の必要な部品として使用されます。

  • その後、各組織へ運ばれなかった残りのLDLは肝臓において取り込まれます。

ハーパー生化学によると、LDLの約30%が肝臓以外の組織で破壊され、残りの70%が肝臓で壊されるとのことです。

LDLはリポタンパクであり、アポタンパク、リン脂質、コレステロール、トリグリセリド、コレステロールエステルからなるものです。悪玉コレステロールと呼ばれていますが、コレステロールそのものではありません。

NOTE

リポタンパクによってトリグリセリド(TG)とコレステロールが運ばれ、配られますが、優先順位は、トリグリセリド(TG)がいつも一番で、カイロミクロンでもVLDLでも最優先で配られていきます。

コレステロールは、VLDLがトリグリセリド(TG)を配ってからやっと配られます。

しかも、LDLの約30%が肝臓以外の組織で破壊され、残りの70%が肝臓で壊されるということなら、供給過剰になりやすいようにも感じます。

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