食べた脂肪は分解されるがコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞ

食べ物に含まれる脂肪はモノグリセリドと2本の脂肪酸に分解されますが、コレステロールは分解されません。これらは胆汁酸によってミセルとなり小腸から体の中に入ってきます。コレステロールは炭素数27で意外とサイズが小さいのです。

ベーコン

コレステロールの消化は習ったことがない

私は文系ですが、子供の頃から、なぜか理科で習う消化の話が好きでよく覚えています。消化は小学校でも中学校でも高校の生物でも習いました。しかし、コレステロールが消化される話は習った記憶がありません。

なにかと問題になるコレステロールなのに、肉を食べたらどのように消化されるかなんて話題にもならないのですね。

コレステロールは意外とサイズが小さい

コレステロールは、化学式で書くとC27H46Oです。炭素数27で4つの環をもつのが特徴です。図で、炭素と水素の大部分を省略したものと、すべて書き出したものを載せておきます。

コレステロール

形が複雑になると、省略してあった方が見やすいですね。ところどころ、-OHや-Hが書かれているのは、それ以外がCH2かCH3だからで、区別するために書かれています。

脂肪と大きさを比べるとコレステロールの方が小さい

脂肪(油)は、消化酵素リパーゼで、脂肪酸が1本ついたグリセリン、モノグリセリドと脂肪酸2本に分解されます。

食品に含まれる脂肪に結合している脂肪酸は、炭素数18のものが多いです。

脂肪の構造はこのようなものでした。脂肪酸

油の構造を知ろうから、試しに書いた油の構造式を持って来ます。

ココアバターの組成

ココアバターの組成

グリセリンは炭素数3です。脂肪酸について、パルミチン酸は炭素数16、オレイン酸は炭素数18、ステアリン酸は炭素数18です。

全部で炭素数は55です。

水素と酸素について数を計算しなくても、炭素数だけで、脂肪はコレステロールの2倍以上の炭素数があることがわかります。コレステロールの方が小さいのです。

脂肪の消化から小腸の膜を通過できる大きさを考えてみる

脂肪の消化から考えてみると、モノグリセリドは、3本の脂肪酸のうち、オレイン酸を残して、パルミチン酸とステアリン酸が切り離されます。

モノグリセリドは、炭素数3のグリセリンと炭素数18のオレイン酸からなるものです。炭素数21。このくらいまで小さくなると小腸の膜を通過できるということです。

炭素数55の脂肪に比べれば、コレステロールの炭素数27はモノグリセリドに近く、このくらいなら分解されなくても小腸の膜を通過できると考えてよいのかな。

デンプンは比べものにならないくらい「でかい」

ちなみに、小学校から高校まで消化の説明で必ず出てくるのが、デンプンがブドウ糖に分解される話です。

デンプンの構造式は、一例ですが、下図のようになっています。ブドウ糖がたくさんつながっています。この図によると300~600つながっています。

デンプン

ブドウ糖は、炭素数6ですから、デンプンは1分子が炭素数1800~3600もつながっている大きなものです。油やコレステロールと比べものにならない大きさです。

食べたものは消化されると習うと、何でもかんでも細かく分解されて腸から吸収されるのだろうと思ってしまいます。

しかし、こうやって分子の大きさを比較してみると、コレステロールが分解されずに体の中に吸収されるのが不思議だと思わなくなりますね。

脂肪とコレステロールはどのように吸収されるか

コレステロールや脂肪、いわゆる脂質は、十二指腸まで運ばれて消化・吸収されます。

胆汁が分泌され、胆汁酸によって脂肪はばらばらの脂肪分子にされ、リパーゼによって、脂肪酸とモノグリセリドに分解されます。

ミセル

次に、胆汁酸がミセルを形成します。ミセルで分かりやすいたとえは、マヨネーズです。お酢と油という本来分離してしまうものが乳化された状態で分離せずに存在します。

コレステロールや脂肪酸といった脂質は、「水と油」といわれるように、本来水に混ざりにくいものですが、マヨネーズのように乳化することで水分の多い血液に混ざるようになり、小腸の粘膜細胞から吸収されます。

このミセルの中には、コレステロール、脂肪酸、モノグリセリドが入っています。

ミセル

ミセル

ミセルの中にあるコレステロールは、食べ物の中にあるコレステロールから何も変化していません。消化酵素で細かく小さくされることもありません。

ただ、ミセルの中に取り込まれて、小腸の粘膜から吸収されます。

さて、小腸の粘膜から吸収された後どうなるか。それは次の記事で書きます。

カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配るをご覧下さい。

カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配る
小腸細胞内にミセルとして入ってきたトリグリセリド(中性脂肪)とコレステロールは、今度は、リン脂質とアポタンパク質からできたリポタンパク質にくるまれ、血液中を流れカイロミクロンとして各組織へトリグリセリド(中性脂肪)を運搬します。もう少し...

NOTE

食べものが消化(分解)されると、エネルギー源になったり体をつくる材料になったりすると習ってきたのですが、コレステロールは消化(分解)されずに腸から入ってくることがわかりました。

すでに十分に小さいみたいです。

ここ数年、食事のコレステロールは気にしなくていい?という話がありますが、食べものから入って来るコレステロールがそのまま小腸から体の中に入って来ると考えると、食べもののコレステロールは、気にした方がよいかもしれないなと思いました。

私の同僚に、毎日牛丼を食べ続けて健康診断でコレステロール値が高いと引っかかった人がいるのです。

コレステロールは、脂肪酸と同じように分解されるとアセチルCoAになりますが、脂肪酸が分解されるよりも反応経路が長いので、コレステロールはエネルギー源とはなりにくいです。

コレステロールは分解されるとアセチルCoAになる
動脈硬化で血管にたまったコレステロールはそのままなんだろうか?動脈硬化は加齢に関係があり、解消されないといわれます。しかし、炭素数27のコレステロールは分解されると、もともとコレステロールの材料だった炭素数2のアセチルCoAになることがわか...

健康診断の血液検査で測定される中性脂肪(TG)は、有酸素運動を長くすると簡単に下がりますが、コレステロールは下がりにくいと思います。

タイトルとURLをコピーしました