米油の脂肪酸組成と成分の特徴

米油は、米ぬかから溶剤抽出法で搾油され精製された油です。脂肪酸組成は、オレイン酸、リノール酸が多く、α-リノレン酸はごくわずかしか含まれません。その他成分にはビタミンEが含まれ、トコトリエノール、γ-オリザノール、植物ステロールが含まれています。

玄米

米油とは

米油は、玄米を精米して白米にするときに出る、米ぬかから搾った油です。米ぬかは、ご自宅でぬか漬けを漬けている方ならよくご存知ですね。お米が原料なので、日本で唯一自給できる油です。こんな特徴があります。

  • 味が軽い
  • 揚げ物がカラッと揚がる

米ぬか

米ぬか

米ぬかの栄養成分を見ると、米ぬか100gあたり、油は20%程度あります。その分、カロリーもお米100gより、米ぬか100gの方が高い。

米ぬかのにおいは、確かに少し油くさいです。

米ぬか100gあたり
エネルギー 412kcal
水分 10.3g
たんぱく質 13.4g
脂質 19.6g
炭水化物 48.8g
灰分 7.9g
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用

溶剤抽出法で搾油され精製される

米油で一番搾りを探している方がいらっしゃるようですが、一番搾りでそのままの米油は存在しないようです。

米油が最初に搾油されたのは元禄年間の 1699 年といわれ、当時は、もちろん、ギューッと圧力をかけてしぼる方式の圧搾法によって搾油されていましたが、現在は、ヘキサンなどを使った溶媒抽出法によります。

ヘキサンとヘキサンを使った抽出法については、油を抽出する溶媒ヘキサンについてに詳しく書きました。

大豆油も溶媒抽出法で搾油されます。原料に含まれる油が20%程度しかない場合は、圧力をかける方式では効率よく搾れないのです。

さらに、米油は、精製されて完成します。

米ぬかのにおいをご存知の方なら、精製されないと使いにくい油になることがおわかりになると思います。また、ぬか床をかき回すとにおいます。米ぬかは結構においます。

ボーソー油脂株式会社の米油ができるまでには、精製について図と動画が公開されています。

ボーソー米油ができるまで | 米油のひみつ | ボーソー油脂株式会社

ページを紹介させていただいたので、ボーソー米油へリンクを貼っておきます。

米油の脂肪酸組成

米油に含まれる脂肪酸について調べました。

オレイン酸、リノール酸が多く、α-リノレン酸はごくわずか

米油の脂肪酸組成で一番多いのは、オメガ9のオレイン酸です。油100g中の約40%を占めます。次いで、オメガ6のリノール酸が約30%を占めます。

3番目は、飽和脂肪酸のパルミチン酸でした。

オメガ3のα-リノレン酸はわずか1.2gしか含まれていません。全体の1%程度しかありません。

米ぬか油100gあたり
脂肪酸総量 91.86g
飽和脂肪酸 18.8g
一価不飽和脂肪酸 39.8g
多価不飽和脂肪酸 33.26g
n-3系多価不飽和脂肪酸 1.15g
n-6系多価不飽和脂肪酸 32.11g
16:0パルミチン酸 16000mg
18:0ステアリン酸 1700mg
18:1 n-9オレイン酸 39000mg
18:2 n-6リノール酸 32000mg
18:3 n-3α-リノレン酸 1200mg
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用

その他の成分

その他の成分として、ビタミンE(トコフェロール)、トコトリエノール、γ-オリザノール、植物ステロールがあります。

ビタミンE(トコフェロール)

日本食品標準成分表2015年版(七訂)によれば、米油にはビタミンEが含まれています。α-トコフェロールが一番多く、25.5mgあります。α-トコフェロールはヒトの体内でビタミンEとして働きます。

量的に「豊富にある」とはいえないですが、米油の特徴の一つであることは間違いありません。

米ぬか油100gあたり
α-トコフェロール 25.5mg
β-トコフェロール 1.5mg
γ-トコフェロール 3.4mg
δ-トコフェロール 0.4mg

ビタミンEについては、ごま油に含まれるビタミンEは大豆油やえごま油より少ないという記事と読み比べてみてください。大豆油とえごま油にもトコフェロールが含まれていて、その数字を比較しています。

トコトリエノール

日本食品標準成分表2015年版(七訂)には出てきませんが、ビタミンEの一種、トコトリエノールが含まれています。以前書いた、なぜビタミンEはα-トコフェロールだけが有効なのかを読んでいただくと、トコトリエノールの構造式も見ていただけます。

トコトリエノールの含有量は、米油の劣化特性評価という論文によると、米油100gあたり40mg程度含まれているようです。

米糠含有成分の機能性とその向上によると、なかなか強力な効果が書かれていました。

α-トコトリエノールの抗酸化性は in vitro ではα-トコフェロールとほぼ同等であるが,細胞膜中ではα-トコフェロールより 40∼60 倍高い.

なお,生体内では,α-トコフェロールは輸送タンパク質と強く結合して各組織へ運搬されるが,トコトリエノールはこの経路を介さずに皮膚に蓄積されるので,これらはそれぞれ異なった部位で機能を発現すると推測される.

また,トコトリエノールは,コレステロール低下作用,神経防護作用,I 型アレルギーの抑制効果,紫外線による皮膚炎症に対する抑制効果,抗血管新生活性,がん関連シグナルの抑制,細胞増殖に関与するテロメラーゼやアポトーシスの抑制作用,肝がん細胞での細胞浸潤抑制作用などの機能をもつといわれる.

これらは、「トコトリエノールの肝癌細胞浸潤抑制作用の解析」(2009)から引かれたようです。残念ながらネットでは読めませんでした。ただ、一方、日本人の食事摂取基準(2015 年版)では、α-トコフェロールのみを指標にビタミン E の食事摂取基準が定められています。今のところ。

γ-オリザノール

γ-オリザノールは、米糠含有成分の機能性とその向上に詳しく書かれていました。医薬品にもなっているそうです。先に書いておきますが、米油に薬みたいな効果を求めるのはばかばかしい間違いですから、念のため。

γ-オリザノール(γ-oryzanol)は 1954 年に米糠油から初めて単離された化合物で,当初は米固有の成分とされたが,トウモロコシや大麦などにも存在する.(中略)

γ-オリザノールは,医薬品として認められており,視床下部のカテコールアミン代謝に関与して心身症(更年期障害,過敏性腸症候群)における心身症候(不安,緊張,うつ)の抑制(通常成人 1 日 10∼50 mg)や,代謝により生じる植物ステロールによる食餌性コレステロールの吸収阻害,コレステロール合成阻害,異化排泄促進作用によるコレステロール低下作用に基づく高脂血症の抑制(通常成人1 日 300 mg)などの効能を有する.(中略)

γ-オリザノールは,皮脂腺賦活,紫外線吸収,酸化防止作用をもつので,化粧品原料としても利用されている.また食品には,食品添加物の酸化防止剤としての使用のみが認められている.

米油の劣化特性評価によると、米油100g中、100mg含まれているそうです。下図は、いくつかあるγ-オリザノールの1つの構造式です。

γ-オリザノール

植物ステロール

植物ステロールは、米油の劣化特性評価によると、米油100g中、1071mg含まれているそうです。構造式は下の通りです。植物ステロールの中の1つ、β-シトステロールです。

ベータシトステロール

コレステロールとそっくりですね。コレステロールを下に並べてみましょう。構造は、ほとんど同じです。違いは、右上にあるエビのしっぽのように見える部分だけ。

コレステロール

植物ステロール(またはフィトステロール)は、米糠含有成分の機能性とその向上にこのように説明されていました。

体内での吸収率は 5% 以下と低く,その代謝機構は解明されていないが,血漿コレステロールやLDL ステロール濃度の低下,コレステロール合成阻害剤との併用による血清コレステロールの低下作用の強化,動脈硬化症や心疾患のリスクの低減などの効果をもつことが知られている.

植物ステロールは、コレステロールと似たものとして体の中に取り込まれても体内での吸収率が低いので、体に吸収されず結果的にLDLの数値が下がるということでしょうか。

NOTE

米油は、日本で自給できる唯一の油です。これが最大の特徴でしょうか。2017年だったかテレビの影響でちょっとしたブームになりましたが、割とすぐにおさまりました。

脂肪酸組成にはあまり魅力はありませんが、上で紹介したその他の成分がなかなか興味深いです。

米ぬかは傷みやすくすぐにおかしなにおいがしてきます。米油が精製されるのがよくわかります。

精製について、一般的にはイメージがよくないのですが、よくよく調べてみると、私はよくないとは思えなくなりました。保存性がよくなり、原料特有のにおいも消え、使いやすい油になります。以前、油の精製とは魔法なのだろうか?という記事を書いたことがあります。

人気のえごま油も精製しているものが結構あります。メーカーに電話して聞いてみたら温度は60℃位といっていたので、もとの原料にクセがそれほどないのでしょう。もちろん、トランス脂肪酸は嫌なので、精製される時の温度は低い方がよいです。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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