豚肉に含まれるオメガ3脂肪酸は、100gあたり75g以上が脂質のロース脂身でも、わずか0.4g程度しか含まれません。赤身と脂身が適当に混ざった豚肉ならどの部位を食べても、オメガ3脂肪酸は、「ない」と思ってよいです。
豚肉の脂肪酸組成は、エサに由来します。
豚肉の部位について
普段、何となく肉を買っていますが、ロース、バラ、ヒレなどなど場所がよくわからなかったので調べました。
東京都中央卸売市場のサイトに牛・豚の基礎知識 – 部位別の名称がありました。
ロースについて調べてみよう
私はトンカツを食べるときにいつもロースを頼みます。ロースについて調べてみましょう。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)には大型種肉と中型種肉の区別がありましたが、数字を見比べるとほとんど違いがないので、大型種肉の数字を使います。
ロースの場所がわからない方は、リンク先に図がありますから見てきてください。背中の部位です。
さて、ロースについて調べると4つに分かれていました。それぞれ生(なま)です。ロースは赤身と脂身がわりとはっきり分かれているので、赤身だけだとほとんど脂質が含まれていないことがわかります。
脂身は白い部分です。
ロース/脂身つき生 | ロース/皮下脂肪なし生 | ロース/赤肉生 | ロース/脂身生 | |
エネルギー | 263kcal | 202kcal | 150kcal | 740kcal |
水分 | 60.4g | 65.7g | 70.3g | 18.3g |
たんぱく質 | 19.3g | 21.1g | 22.7g | 5.1g |
脂質 | 19.2g | 11.9g | 5.6g | 76.3g |
炭水化物 | 0.2g | 0.3g | 0.3g | 0 |
灰分 | 0.9g | 1g | 1.1g | 0.3g |
食塩相当量 | 0.1g | 0.1g | 0.1g | 0 |
あたりまえですが、脂身はほとんど(75%以上)が脂質です。
脂身にオメガ3の脂肪酸がどのくらい含まれているか最初に調べれば、あとは大体想像できます。やってみましょう。
一番脂質が多い脂身でもわずか0.48g
100g中76.3gが脂質のロース脂身ですが、そのロース脂身100gに含まれるオメガ3の脂肪酸は、わずか0.48gです。脂身で、0.48gです。
普通に食べる、赤身と脂身が適当に混ざった豚肉では、どこを食べても「ない」に等しいです。
ちなみに一番多いのはオレイン酸。オリーブ油の主成分です。次いで、飽和脂肪酸のパルミチン酸、ステアリン酸と続きます。リノール酸も8g程度ありますね。
ロース/脂身生 | |
エネルギー | 740kcal |
水分 | 18.3g |
たんぱく質 | 5.1g |
脂質 | 76.3g |
炭水化物 | 0 |
灰分 | 0.3g |
脂肪酸総量 | 71.58g |
飽和脂肪酸 | 32.03g |
一価不飽和脂肪酸 | 30.08g |
多価不飽和脂肪酸 | 9.48g |
n-3系多価不飽和脂肪酸 | 0.48g |
n-6系多価不飽和脂肪酸 | 9g |
14:0ミリスチン酸 | 1100mg |
16:0パルミチン酸 | 18000mg |
18:0ステアリン酸 | 12000mg |
16:1パルミトレイン酸 | 1200mg |
18:1計 | 28000mg |
18:2n-6リノール酸 | 8400mg |
18:3n-3αーリノレン酸 | 370mg |
20:4n-6アラキドン酸 | 120mg |
22:6n-3ドコサヘキサエン酸 | 41mg |
肉に含まれる脂肪酸はエサ由来
豚肉の脂肪に含まれる脂肪酸は、何を食べているかに影響されます。もう少していねいにいうと、エサに含まれる脂質が、豚肉の脂質になります。
豚は雑食性
「豚のえさ」といういい方があります。あまりよい意味ではないのですが、豚が何でも食べる雑食性であることも示しています。
畜産ZOO鑑(ちくさんずーかん)の何でも食べ、おいしい肉に変えてくれる【エサのあたえ方】には、「多くの豚は、トウモロコシやダイズなどを混ぜたエサ(配合飼料)を食べています」と書かれていました。
さらに、エサの種類と特徴には次のように書かれています。
エサには、大きく分けて濃厚飼料と粗飼料があります。濃厚飼料は粗飼料に比べ、タンパク質、炭水化物などが多く含まれており、粗飼料は牧草などからつくられるため、カサがあります。それぞれの原料となるものには
濃厚飼料:穀類、ヌカ類、油粕類、製造粕類、動物質飼料、残飯など
粗飼料:青刈り作物、牧草、根菜類があります。
穀物にはリノール酸が多い
トウモロコシや大豆など穀物には一般にリノール酸が多く含まれています。穀物油もリノール酸が多いのが特徴です。α-リノレン酸も含まれていますが、その割合はリノール酸の方がずっと高い。
穀物をたくさん食べれば、含まれている脂質はエネルギーとしても使われますが、肉の脂身にたまっていきます。
トウモロコシや大豆は生産量が多く、栄養価が高く、安価であるので飼料として一般に使われます。
NOTE
肉にどのくらいオメガ3が含まれるんだろう?と思った時は、どんなエサを食べているんだろうと考えるとよいです。
もし、穀物がたくさん与えられていたら、トウモロコシや大豆なので、リノール酸はそこそこあるけど、オメガ3のα-リノレン酸はほとんどありません。
ちなみに、ヒトも同じです。
以前、EPAの効果についてという記事を書きました。
その中で、イヌイットとデンマーク人の血液検査の話を書きました。血漿中のアラキドン酸とEPAを比較すると、デンマーク人とグリーンランドイヌイットでは正反対の結果になりました。
もちろん、イヌイットの血漿中のEPAの値はとても高いのです。魚や魚をエサにしている動物を食べているからです。
その他の畜産物とオメガ3については、畜産物の中のオメガ3をご参照下さい。