脂肪はエネルギーになるためにβ酸化されアセチルCoAまで分解される

脂肪は、エネルギー源になります。1グラムあたり9kcalの熱量を持っています。これは1リッターの水の温度を9度上げることができる熱量です。炭水化物の2倍強の熱量があります。

脂肪が消化される時は、脂肪酸とモノグリセリドまでしか分解されませんでした。これではまだ使えません。脂肪が体の中でエネルギー源になるためには、脂肪酸がさらに分解されます。

分解される場所は、ミトコンドリア。酸素呼吸の中枢の場所です。酸素呼吸では、通常ブドウ糖を燃やします。ブドウ糖はピルビン酸からアセチルCoAに分解され、TCA回路で何種類かの物質に変化しながらエネルギーを出していきます。

β酸化まず脂肪は脂肪酸とグリセリンになる

脂肪の場合は、細胞の中でアシルCoAまで分解され、さらにミトコンドリアの中でβ酸化という作用を受けてアセチルCoAになり、そしてTCA回路に入ります。このあたりは私自身が詳しく知っておきたいので、あれこれ調べながら書いていきます。

アシルCoAのアシルとは、下の図を見てください。

アシル基

アシル基

脂肪酸にはカルボキシル基(-COOH)がついています。グリセリンのOHと反応して水(H2O)が取れて結合することができました。この時できる、図の下の部分、カルボキシル基を持っていた物質からカルボキシル基のOHを除いた残りの部分のことをアシル基といいます。

アシルCoAとは、アシル基にCoAが結合したものです。

脂肪はまずリパーゼという酵素によって脂肪酸とグリセリンに分解されます。

脂肪酸にCoAがついてアシルCoAになる

脂肪酸は、細胞の中(細胞質ゾル)に入ってきて来ます。細胞質ゾルとは、細胞質から細胞内小器官を除いた部分、小器官はミトコンドリアや小胞体などありますから、細胞の中の空間だと考えればよいでしょう。

そこで、脂肪酸は、補酵素A(CoA)が結合してアシルCoAとなります。下図はアシルCoAの一般式です。

Rと二重結合のO(酸素)その下のS(硫黄)につながった腕までが脂肪酸だと思ってください。Rは有機基といって、炭素と水素の鎖です。炭化水素鎖の長さは脂肪酸によって違っていて何種類もありますから省略されてRになっています。CoAは補酵素Aと呼ばれます。脂肪酸とつながるCoAの末端の足がS(硫黄)です。

アシルCoA

アシルCoA

補酵素とは、酵素が基質に完全に作用するために必要な補助分子。コエンザイム(coenzyme)、助酵素などとも呼ばれます。この説明だと何だか分かりませんが、ここでの役割は、後で詳しく説明しますが、炭素2個からできたアセチル基を連れて行くことです。CoA自体は反応を受けません。

補酵素CoAとは

CoAとは、下図に書いた構造式のような物質です。赤い点線で囲まれている部分が、上の構造式にある、S-CoAです。下図でH(水素)を赤い点線から外したのは、他のものと結合する時に外れてしまうからです。

しかし、CoAは補助分子という割には構造が複雑ですね。いままで見てきた脂肪酸の構造が簡単すぎるのでしょうか。

CoA

CoA

さて、脂肪酸にこの複雑なCoAがくっついたアシルCoAは、これからミトコンドリアに入ります。

アシルCoAはCoAを外してカルニチンをつける

ミトコンドリア

ミトコンドリア

ミトコンドリアは図のような構造になっています。アシルCoAは、これからミトコンドリアのマトリックス内に移動します。しかし、アシルCoAはストレートにマトリックス内に入れないのです。

アシルCoA

アシルCoAミトコンドリアへ

ミトコンドリアに入る前に、アシルCoAは、CoAを外し、カルニチンと結合してアシルカルニチンになり、ミトコンドリアの外膜と内膜を通過して、マトリックス内に移動します。

アシルカルニチンはカルニチンを外して再びCoAをつける

マトリックス内に来ると、アシルカルニチンは、カルニチンを離し、再びCoAと結合してアシルCoAとなります。

アシルCoAは、これから4つの反応を経てアセチルCoAをつくります。

アシルCoAに二重結合ができる

最初の反応でα炭素とβ炭素の間に二重結合が形成されます。α、βとは、もともとカルボキシル基だった隣のC(炭素)から、α、βと数えていきます。α炭素とβ炭素は1個ずつ合計2個水素(H)を離し、FADはその水素をもらってFADH2になります。

FADH2は、細胞が使うエネルギーATP(アデノシン三リン酸)生成に関わります。別な反応で使われます。

Beta_1(図出典)

アシルCoAの二重結合が水酸化される

次に、酵素の反応でβ炭素の位置に形成された二重結合にH2Oが反応して、水酸化されます。下の図で説明すると、α-β間の二重結合が解消され、β位に水酸基(-OH)が結合します。

beta2(図出典)

アシルCoAの水酸基がケト基(=O)に変わる

さらに酸化されて、β炭素の位置にある水酸基(-OH)がケト基(=O)に変わります。OHがついている炭素Cは、もう1つ別の水素(H)とも結合しているのですが、その水素(H)と水酸基(-OH)についていた水素と合計2個が外れてNAD+に水素(H)が1個結合して、NADHになります。残った酸素は炭素と二重結合に変わります。

NADHもATP生成に関係する物質です。別な反応で使われます。

beta3
(図出典)

アシルCoAからアセチルCoAが切り離される

次に、下図の色が変わった部分から切り離され、新たにCoAがくっついて前よりは炭素鎖が短くなりましたが、アシルCoAになります。切り離されたもう一つは、アセチルCoAとなります。

図をよく見てください。アセチルCoAのアセチルとは、下図の一番右側、色がついた部分をみてください。CH3CO−という部分を指しているのです。酢酸CH3COOHから水酸基(-OH)を切り離した形で、アセチル基といいます。

CoAは、それに比べればずっと複雑な物質ですが、そのCoAが連れて行くアセチル基は、わずか炭素2個、水素3個に酸素が1個からできている簡単なものです。

アセチルCoAがCoAも含めて全体が意味ある物質だと思ってしまうと、脂肪酸はなんだか分からない物質に変化したのかと思いますが、そうではありません。

脂肪酸からたった炭素2個からなるアセチル基(CH3CO−)が切り離されて、それがCoAに連れて行かれると思ってください。

さて、炭素鎖が炭素2個分短くなった脂肪酸アシルCoAは、次のβ酸化の第1段階の基質となり、脂肪酸アシル鎖の部分がすべてアセチルCoA に酸化されるまで反応は繰り返されていきます。

炭素2個ずつ、一枚ずつ皮をはがされるように、脂肪が分解されていく感じでしょうか。

beta_4図出典

そして、このアセチルCoAは、TCA回路に入り、ATPをつくる反応に関与していきます。糖も脂肪もエネルギーをつくるときは、アセチルCoAとなり、TCA回路に入ります。

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