ひまわり油で国産、遺伝子組み換えなしで高オレイン酸タイプがあった

この記事では、国産で遺伝子組み換えしていない、オリーブ油よりも高オレイン酸(ハイオレック)のひまわり油について書きます。リノール酸は4%しか含まれていません。北海道の名寄市で作られています。また、なぜオリーブ油よりもオレイン酸が多くなるのかも調べました。

ひまわり

オリーブ油よりオレイン酸が多い(84%)国産ひまわり油

この油、北海道名寄市でつくられていて、オリーブ油よりもオレイン酸が多く、生一番搾りの油。なかなかよいお値段(¥1,404)がしますが、国産というのが魅力です。

【公式】ひまわり油 北の耀き 北海道名寄市
ひまわり油「北の耀き(きたのかがやき)」は、オレイン酸・ビタミンE等の体に良い成分を多く含み、ひまわりそのものを思わせる美しい黄金色と香ばしい薫り、深いコクが特徴です。昔ながらの圧搾法にこだわり、化学薬品・添加物を一切使用せず、素材の良さをそのまま引き出しています。揚げ物やお菓子作りなど、さまざまなレシピで活用できます...

ところで、楽天を見ていたら、ひまわり工房が出店していました。こちらの方が買いやすいかな。

脂肪酸組成

脂肪酸組成がすごいです。オレイン酸が84%以上あります。リノール酸は4%しかありませんから、今のリノール酸過多の時代に使う油としてはとてもよい条件です。

100gあたり(出典)
ビタミンE(αトコフェロール) 80.5mg
オレイン酸 84.9g
リノール酸 4.0g
α-リノレン酸 検出せず
飽和脂肪酸 7.4g
その他の脂肪酸 3.7g

実は私、つい最近まで、ひまわり油には全く興味がありませんでした。なぜかというと、下のグラフを見てください。自分で以前作ったグラフです。

ひまわり油は高リノール酸のタイプしか調べられませんでしたが、リノール酸がそこそこある油なんだろうと思っていました。

脂肪酸組成

そして、もし、高オレイン酸のものがあるなら、遺伝子組み換え技術が使われているのだろうと思っていたのです。

栽培条件でリノール酸とオレイン酸の含有率を変化させる

ところが、先日、農家が教える手づくり油読本―栽培・搾油から燃料まで(農山漁村文化協会 2012)を読んでいたら面白いことが書かれていました。ひまわりに関する記事で、リノール酸、オレイン酸の含有率を変化させる技術があるのです。

この本を読んだことがきっかけになり、さらにネットで調べていくと、いろいろなことがわかりました。

油糧作物ひまわり栽培の歴史

油糧作物としてのひまわりについてを読むと、ひまわりは、紀元前3000年には北米で栽培が始まり、その後、スペイン、ロシアと伝播し、1830年代にはロシアで油糧作物としての栽培されるようになったそうです。

育種が開始されたのはロシアで、1912年のこと。その時期に含油率向上などの成果が得られました。

日本では、1970年代には試験研究が行われており、1980年代にはJAを中心とした試験栽培も行われたようですが、現在でも、広く栽培されているとはいえない状況だそうです。

ひまわり油の脂肪酸組成は変化する

ひまわり油に含まれるリノール酸とオレイン酸の含有率は気温と水分によって変化します。リノール酸もオレイン酸も炭素数18の脂肪酸です。

リノール酸はオメガ6の脂肪酸で、カルボキシル基の反対のメチル基から6番目と9番目の炭素に二重結合があります。融点は−5 °C

リノール酸

リノール酸

一方、オレイン酸は、オメガ9の脂肪酸で、カルボキシル基の反対のメチル基から9番目の炭素に二重結合があります。融点は13.4 °C

オレイン酸

オレイン酸

2つの脂肪酸の違いは、二重結合が一つ余分にあるかないかだけです。リノール酸、オレイン酸の含有率は拮抗しているということなのでしょうか。これら脂肪酸の含有率を変化させる技術のポイントは2つあります。

それは、開花から成熟期までの気温と、土壌水分条件です。

開花から成熟期までの気温

ヒマワリの脂肪酸組成のうち、リノール酸が49%から74%の間で変化することが知られています。これは開花後から収穫までの平均最低気温に影響されます。

開花後から収穫までの期間を結実期間というようですが、結実期間の平均気温が低いとリノール酸の割合が高くなり、オレイン酸が低くなる結果が出ています。この記事のもとになった実験では、リノール酸は20~80%、オレイン酸は70~10%の範囲で変動していました。

使われた品種は、台南選1号、IS903、NK275、Peredovikです。品種については、Peredovikがロシアで育種が行われ始めた頃の古い品種だということぐらいしか分かりませんでした。特に高オレイン酸の品種というわけではないようです。

グラフを見ると、結実期間の平均気温が20℃を切っている場合は、どの品種もリノール酸の含有率は70%近くあります。その時のオレイン酸は20%を切っています。しかし、結実期間の平均気温が26℃あたりで両者が同じになり、それより高くなると、オレイン酸が70%リノール酸は30%を切るようになります。

また、油分含有率(種の中に占める油の割合)は、結実期間の積算気温と正の相関があり、最大含有率が52%でその時の結実期間の積算気温は1150℃でした。

以前、魚の脂肪酸EPAやDHAは藻や微生物由来ですとを書きましたが、その時に、魚の脂肪には融点の低いオメガ3の脂肪酸が多くないと脂肪が固まって泳げなくなってしまうなあと思ったのです。

オレイン酸の融点は13.4 °Cで、リノール酸の融点は−5 °Cです。

平均気温が低くなるとリノール酸の割合が高くなるのは、自然の摂理なのかもしれませんね。

高土壌水分だとリノール酸が増える

オレイン酸とリノール酸の比率については、結実期間の平均気温の影響の他、土壌水分条件も影響することが報告されています。高水分条件では、オレイン酸/リノール酸は減る傾向があるそうです。

つまり、リノール酸が増えてオレイン酸が減るということです。これら組成の変化については、脂肪酸不飽和酵素が関係しているといわれています。脂肪酸不飽和酵素は、炭素の二重結合を増やす酵素です。

温度と土壌の水分によって脂肪酸組成が変わるので、もし高オレイン酸のものをつくるなら、栽培管理がとても大変です。

それを楽にしてくれるのが品種改良です。

高オレイン酸ひまわり油

ひまわりを品種改良して高オレイン酸化したものは、1970年代に旧ソ連から始まりアメリカで改良されて広がってきました。

現在は、オレイン酸が75~85%でリノール酸が5~10%の高オレイン酸タイプのものが主流になっているそうです。結実期間の平均気温の影響をほとんど受けないようです。

北海道名寄市立大学のサイトに高オレイン酸ひまわりの栽培・ひまわり油成分分析と今後の課題という記事がありました。

もう一つ、高オレイン酸ひまわりによる第6次産業化の取り組みとアメリカにおけるひまわり関連産業という記事もありました。

読んでみると、平成20年に高オレイン酸ひまわりを栽培するために、ホクレン農業協同組合連合会から試験栽培用の種子の提供をうけ、名寄市内で試験的に栽培、採取した種子から搾油し、ひまわり油を試作したとあります。

平成22年になると、11農業者が「名寄ひまわり生産組合」を組織し、搾油事業者と「ひまわり栽培委託契約」を締結して約30haの高オレイン酸ひまわりを栽培した。さらに搾油事業者が収穫した種子からひまわり油を搾油し本格的に販売を開始するようになったそうです。

正確な品種名は書かれていないですが、遺伝子組み換えではないそうです。

脂肪酸組成は冒頭に載せた通りです。

100gあたり(出典)
ビタミンE(αトコフェロール) 80.5mg
オレイン酸 84.9g
リノール酸 4.0g
α-リノレン酸 検出せず
飽和脂肪酸 7.4g
その他の脂肪酸 3.7g

株式会社 名寄給食センターが運営する北の耀きが公式サイトのようです。

【公式】ひまわり油 北の耀き 北海道名寄市
ひまわり油「北の耀き(きたのかがやき)」は、オレイン酸・ビタミンE等の体に良い成分を多く含み、ひまわりそのものを思わせる美しい黄金色と香ばしい薫り、深いコクが特徴です。昔ながらの圧搾法にこだわり、化学薬品・添加物を一切使用せず、素材の良さをそのまま引き出しています。揚げ物やお菓子作りなど、さまざまなレシピで活用できます...

まとめ

ひまわり油の高オレイン酸タイプは、遺伝子組み換え技術を使わなくても栽培可能だということが分かりました。

今の時代、できるだけリノール酸を減らすことは気をつけなければいけないと思います。そんなときに、国産で、しかも栽培しやすいひまわりからオリーブ油よりもオレイン酸が多い油が得られることが分かるとちょっと嬉しいです。

小豆島ではオリーブ栽培が盛んですが、栽培量が少ないので国産オリーブ油は手に入りにくいです。

土地の広い北海道のひまわり油に期待しましょう。

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