プロスタグランジンE2が問題だ

リノール酸を摂りすぎるとよくないといわれる理由は、変換されたアラキドン酸が炎症やアレルギー反応をひどくするプロスタグランジンの材料になるからだといわれます。そのプラスタグランジンは、プロスタグランジンE2(PGE2)が主役のようです。

体温計

人のアブラはなぜ嫌われるのか -脂質「コレステロール・中性脂肪など」の正しい科学はタイトルにひかれて本屋に並んだ早々に買いました。

人のアブラはなぜ嫌われるのか -脂質「コレステロール・中性脂肪など」の正しい科学
タイトルから顔に浮かぶ脂についての本なのかなと思いますが、いまどきの油について広く一通り説明してくれる本です。技術評論社の知りたいサイエンスシリーズはよい本が多いです。油について知りたいと思っている人が一通り学べる本タイトルは顔...

しかし、この本はタイトルとは違って、油の知識を広く得るためにとてもよい本でした。アマゾンではレビューがほとんど付いていないですが、もったいない。タイトルがあまりよくないからかな。

オメガ6のアラキドン酸からできるプロスタグランジンが炎症やアレルギー反応を亢進するといわれています。そのことについてていねいに説明されています。

正反対の働きをするプロスタグランジンができる

必須脂肪酸のバランスはなぜ重要か?という見出しの記事で、オメガ3とオメガ6の脂肪酸のバランスを取る意味が解説されています。

どちらも体にとって必要な油=必須脂肪酸ですが、この必須脂肪酸の摂取バランスが崩れると、「プロスタグランジン」という物質の生成がアンバランスになり、体の調整機能に様々な不具合が生じてしまいます。(中略)

プロスタグランジンは、ホルモンによく似た働きをする生理活性物質で、血管の拡張・収縮、血小板の凝集・阻害、血液の凝固・溶解、炎症・アレルギー反応の抑制・促進など、体の様々な調整機能に関与しています。

オメガ3とオメガ6の脂肪酸は、必須脂肪酸と呼ばれています。必須脂肪酸からそれぞれプロスタグランジンができます。

プロスタグランジンは、ホルモンによく似た働きをすると書かれています。体の調整に指示を出す物質です。その指示の結果、血管が拡張したり収縮したりと体の反応が起きます。

プロスタグランジンE1とE3は抑制、E2は促進

つくられるプロスタグランジンには種類があり、アクセルとブレーキのように反対の作用を持ち、体に起きる反応を調整します。

プロスタグランジンの種類についてこのように書かれていました。

具体的にいうと、プロスタグランジンはE1、E2、E3という3つの種類に分かれており、図に示したように、E1とE3はアレルギーや炎症を抑制し、血液を融解させる方向に、E2は逆にアレルギーや炎症を促進させ、血液を凝固させる方向に働くことがわかっています。

図はこの表のことです。こちらの方がわかりやすいかもしれません。

プロスタグランジンの性質
血液 血管 炎症
E1、E3 溶けやすい 拡張する 抑制する
E2 固まりやすい 収縮 促進する

プロスタグランジンの種類E1、E2、E3の違いは、もともとの脂肪酸の違いに由来します。

アラキドン酸からE2ができてEPAからE3ができる

プロスタグランジンE1はジホモ-γ-リノレン酸から、E2はアラキドン酸から、E3はEPAからできます。

E1は、n-6系のリノール酸の代謝産物であるジホモ-γ-リノレン酸から、E2はこのジホモ-γ-リノレン酸がさらに代謝してできたアラキドン酸から、E3はn-3系のα-リノレン酸の代謝産物であるEPA(エイコサペンタエン酸)から作られます。(中略)

n-6系の摂りすぎによって問題になるのは、E2のプロスタグランジンが増え、アレルギーや炎症が促進され、血液が凝固しやすくなるという点です。

それを抑制してくれるのがE1、E3ということになりますが、n-3系が不足するとそれが難しくなり、体の調整機能が狂ってしまいます。

いわばブレーキが利かず、アクセルばかりかかる方向に進んでいってしまうとイメージすればいいでしょう。

動脈硬化、心筋梗塞との関わりで言えば、血小板が固まったり、血栓ができやすくなるため、発症のリスクが増すことが指摘されているのです。

ジホモ-γ-リノレン酸からできたE1はE2と正反対の働きをする

ジホモ-γ-リノレン酸はオメガ6の脂肪酸で、上の文に出てくる通り、リノール酸からアラキドン酸に変換される経路の途中にできる物質です。アラキドン酸に変換される一つ手前の物質です。

同じリノール酸から変換されてできたのに、正反対の働きをするプロスタグランジンを作るというのが興味深いです。

リノール酸からアラキドン酸までの変換は、リノール酸はアラキドン酸に変換されるに詳しく書きました。この記事を読んで、ジホモ-γ-リノレン酸のできる順番をご確認下さい。

リノール酸はアラキドン酸に変換される
リノール酸がアラキドン酸に変換され、さらにドコサペンタエン酸に変換されるまでを順番に説明します。エイコサノイドは炭素数20の脂肪酸からつくられます。炭素数20のアラキドン酸からは炎症を亢進させるエイコサノイドがつくられます。これが、リノール...

NOTE

オメガ3のα-リノレン酸はEPAに変換され、オメガ6のリノール酸は、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸に変換され、ホルモンのような生理活性物質であるプロスタグランジンに変化します。

EPAからできるE3とアラキドン酸からできるE2の働きは正反対です。そして、アラキドン酸の一つ前にできるジホモ-γ-リノレン酸からできるE1もE2と反対の働きをします。

脂肪酸は、炭化水素鎖の端にカルボキシ基(COOH)がついたとても単純な構造の物質です。それが血管を収縮させたり拡張したり、炎症を亢進したり抑制したりする物質になるのがとても興味深いです。

一体脂肪酸はどんな変化をするのでしょう?

それをこれから調べていきます。

この他のアラキドン酸についての記事は、アラキドン酸についてをご覧下さい。

タイトルとURLをコピーしました