油の精製とは魔法なのだろうか?

食品の精製というとあまりよいイメージがありません。砂糖の精製、塩の精製、小麦粉の精製などなど・・・。しかし、そもそも精製とはどんなことを行うのでしょう?

精製(せいせい、英語表記:refining)とは、混合物を純物質にする工程、あるいはその技術。化学的に合成した化合物や、抽出などにより得た化合物は、多くの場合いくつかの化合物の混合物であるため、単一で純度の高いものにするために精製を行う。(出典

油は、圧力をかけてしぼる圧搾、溶媒ヘキサンに溶かして抽出することによって得られ、これを原油といいます。

原油には、ガム質・遊離脂肪酸・色素・有臭物質・微細なきょう雑物などの不純物が含まれています。油の精製とはこれらを除去することをいいます。

精製するとどんなメリットがあるでしょう。しぼったままの油に比べて品質が一定のものになります。また脱酸されると酸化されにくくなり保存性がよくなります。

ガム質のガムは、噛むガムと同じ意味ですが、ガムはゴムのことではなく、ねばねばべたべたしているものの総称として使われています。

精製は、脱ガム脱酸脱色脱臭という4つの工程からなります。

脱ガム

脱ガムの「ガム」は、主にリン脂質のことを指します。リン脂質とは、細胞膜の主要な構成成分です。リン脂質には、疎水性(水に溶けない)を示す部分と親水性(水に溶ける)を示す部分があり、油と違って水になじみます。その性質を利用して、原油に温水を加え、リン脂質を温水に溶かし、遠心分離機にかけて油と分離させて取り除きます。

取り除いたものがレシチンの原料になります。

レシチンというのは、本来はホスファチジルコリンという特定の物質のことをいいました。オリーブオイルの主成分であるオレイン酸と飽和脂肪酸であるパルミチン酸という2つの脂肪酸とグリセリン・リン酸・コリンが複合した物質です。

リン脂質の構造は、中性脂肪の構造と似ていて、グリセリンに脂肪酸が3本ついているところが、1本がリン酸とコリンが結合したものに置き換わっています。中性脂肪の構造については、油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよを見てください。

phosphatidylcholine

しかし、現在では、リン脂質を含む脂質製品のことを総称してレシチンと呼んでいます。特定の物質名ではなくなりました。

今は原料に何を使用しているかで分類され、卵黄を原料とするものは「卵黄レシチン」、大豆を原料とするものは「大豆レシチン」と呼ばれています。お菓子の箱の裏を見るとよく書いてあります。

脱酸

油に含まれる遊離脂肪酸を、水酸化ナトリウムを使って石けんにし、遠心分離機を使って分離します。このとき微量金属や色素の一部も一緒に取り除かれます。脂肪酸の端にはカルボキシル基(-COOH)がついていて、これが酸性を呈します。脱酸については「石けん」というのが面白かったので少し詳しく調べました。

脱色

油に天然の白土を加工した活性白土を加え、クロロフィルやカロチノイド系の色素を吸着させて脱色します。クロロフィルは葉緑素のことですが、これが残っていると、酸素を発生させるそうです。酸化の原因になります。

活性白土というのは、天然の白土に強い酸を加えるようです。これは別に調べてみようと思います。活性白土および酸性白土も食品衛生法によって食品添加物として規定されています。

色素類を吸着させた白土は、ろ過によって除去します。一般的な処理条件は脱色温度80~140℃、接触時間10分以上です。

脱臭

脱酸・脱色を終えた油に、高温・高真空の状態で水蒸気を吹き込み、不快な臭いや呈味物質を除去します。この工程で出てくるスカム(油滓)から抽出されるのが卜コフェロール(ビタミンE)です。これは大豆にたくさん含まれているそうで、食品の酸化防止、サプリメントに使われます。

世界の油の生産量は、パーム油が一番多く、次に大豆、なたね油と続きますが、卜コフェロール(ビタミンE)は大豆由来だと考えてよいようです。この大豆スカムは卜コフェロール(ビタミンE)の原料として価値があるので、国際間で取引されています。

高温というのは230℃くらいにするようです。熱に弱そうなリノール酸やαリノレン酸は沸点が230℃あたり、飽和脂肪酸のステアリン酸は361°C。パルチミン酸も351°Cでもっと高いです。大豆が含む油脂の50%くらいがリノール酸です。あまり高くするとトランス脂肪酸が増えてしまうので、そのぎりぎりまで高い温度にするということです。

脱ろう

べに花油やコーン油など、ろう分が多い油に行います。ろう分はやや低い温度で固まり、油の濁りの原因になります。それで、0度~10度くらいの温度に油を10時間~45時間くらい冷却することでロウ分を分離する低温で固まる成分(ろう分)を析出させたあと、ろ過によってこれを除去します。私の家でもたまに買ってきた油を冷蔵庫に入れておくと固まることがありましたから、この話はよく分かります。

精製について思うこと

油はおもに穀物から製造されていて、自然物ですから品質を一定にすることがむずかしいですね。油は精製されることで、化学式で書かれる、油の本質であるグリセリンと3本の脂肪酸のエステルに近づきます。それ以外のものは原則取り除かれていきます。天然ビタミンEが、大豆油からの廃物利用だとは思いませんでしたけれども。(笑)

精製された油は、さらさらして、冷蔵庫でも固まらず、酸化もしにくくて長期保存ができて、(きっと精製しない油に比べて)安価だと思います。大量生産できるからです。

また、一度精製した油に、取り除いた風味や色成分を足すようなこともきっと行われていると思いますが、そうすることで品質管理がしやすくなるのはいうまでもありません。

そういう意味で、油の精製は、魔法の一つといってよいかもしれません。

私は日常的に玄米を食べていたり、有機農業が好きだったりするので、加工品は正直あまり好きではないです。しかし、自分でこうやって調べてみると、品質を維持することとコストを下げることを両立するために食品メーカーがやっていることは納得できることが多いです。そうはいうものの、食用油の製造がこれほど工業的に行われているとは思いませんでした。

あとは、油を買ってくる消費者である私たちの問題です。読んでくださった方は、ひょっとして大豆油やコメ油が溶剤ヘキサンを使って抽出されているなら使うのをやめようと思うかもしれません。もし、そうなら高い油を少量ずつ買うことにして、たまに天ぷらなど揚げ物をするときは、安い油でよいことにするとか、自分の食生活のスタイルを考えていくのがよいと思いました。

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