飽和脂肪酸を短いのから長いのまで書いた

飽和脂肪酸は、炭素の余っている腕に水素が全て結合している脂肪酸です。炭素数が少ない、短い飽和脂肪酸は、くさいにおいがあるのが特徴です。また、飽和脂肪酸は、長くなるほど融点が高くなります。

飽和脂肪酸は炭素に水素がまんべんなく結合している

飽和脂肪酸の「飽和」は、炭素の結合する4本の腕が全て使われている状態であることを意味しています。

飽和脂肪酸の種類を書いて行きます。炭化水素鎖の長さが変わりますが、形は変わりません。炭素数は2個ずつ増えますが、それは体の中で合成するときの仕組みです。

脂肪酸の特徴となるのは融点です。融点が高いか低いか少し気をつけて読み進めてください。

主な飽和脂肪酸を紹介します。

脂肪酸は、炭素数が少ないと短く、炭素数が多いと長くなります。

短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸は、炭素数2から6までの飽和脂肪酸です。

酢酸(C:2)

酢酸はacetic acid。

お酢の主成分なのですが、脂肪酸の一つです。化学式は、示性式 CH3COOH、分子式 C2H4O2と表されます。強い酸味と刺激臭を持ちます。(出典

融点は、16.7 °C

短鎖脂肪酸は、においがある。「くさい」特徴があります。短鎖脂肪酸はくさいという記事で説明しました。

短鎖脂肪酸はクサイ
食用油のにおいをかいでも臭くありませんが、脂肪酸が短くなるとにおうようになります。ギンナンのにおい、靴下のにおい、汗臭いにおいなど短鎖脂肪酸が原因です。炭素数2から6の短鎖脂肪酸のにおいを調べました。納豆がくさいのは短鎖脂肪酸のせいだ...

酢酸の構造式を3通り書きます。一番上が一般的で、見やすく省略された形で書かれています。最初は違和感があるかもしれませんが、すぐに慣れます。下まで見ていただくと意味がわかると思いますが、全て書いてあると、とても見づらいのです。

原則はこの通り。

  • C(炭素)とH(水素)が省略されています。
  • C(炭素)に水素以外のものが結合している時は必ず表示します。

酪酸(C:4)

酪酸はbutyric acid。

化学式は、示性式CH3(CH2)2COOH、分子式はC4H8O2

バターから得られたのでこの名で呼ばれるようになりました。銀杏の異臭の原因でもあり、足の悪臭の原因でもあります。(出典

融点は、 −7.9 °C

カプロン酸(C:6)

カプロン酸はcaproic acidと綴ります。

化学式は、示性式 CH3(CH2)4COOH、分子式はC6H12O2

ヤギの毛の油の分解物から得られ、ヤギの体臭様のきわめて不快な臭気をもちます。(出典

融点は、−3 °C

中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸は炭素数8から12の飽和脂肪酸です。

カプリル酸(C:8)

カプリル酸はcaprylic acidと綴ります。

化学式は、示性式 CH3(CH2)6COOH、分子式はC8H16O2

常温常圧では、弱い不快な腐敗臭を持つ油状の液体です。水にはほとんど溶けません。

融点は、16.7 °C

どうでしょう?脂肪酸の形がおわかりになりましたか?炭素数が増えると、とても見づらくなってきます。一番上の省略された形が一般的です。
ここから先は、省略された構造式だけを書いていきます。

カプリン酸(C:10)

カプリン酸はcapric acidと綴ります。

化学式は、示性式 CH3(CH2)8COOH 、分子式はC10H20O2

融点は、31 °C

ラウリン酸(C:12)

ラウリン酸は lauric acidと綴ります。

化学式は、示性式はCH3(CH2)10COOH、分子式はC12H24O2

融点は44℃~46℃です。(出典

長鎖脂肪酸

ミリスチン酸(C:14)

ミリスチン酸はmyristic acidと綴ります。

化学式は、示性式は CH3(CH2)12COOH 、分子式は C14H28O2出典

融点は、54.4℃

パルミチン酸(C:16)

パルミチン酸はpalmitic acidと綴ります。

化学式は、示性式 CH3(CH2)14COOH、分子式 C16H32O2出典

融点は62.9℃

ステアリン酸(C:18)

ステアリン酸はstearic acidと綴ります。

化学式は、示性式 CH3(CH2)16COOH、分子式 C18H36O2出典

融点は 69.9 °C

炭素数が多くなるほど融点が高くなる

炭素数2~18まで飽和脂肪酸を見てきました。形は変わらず、炭素数が増えていくだけです。酢酸は別として、飽和脂肪酸の長さが長くなるほど融点が上がります。

炭素数が10のカプリン酸から、常温では固体になります。

飽和脂肪酸は、全ての結合の腕がふさがっているので酸化されにくい性質があります。つまり変質しにくく、保存性がよい。

しかし、飽和脂肪酸は、コレステロール値を上げる性質がありあまり評判がよくありません。飽和脂肪酸がコレステロールを上げるのはなぜ?という記事に詳しく書きました。

飽和脂肪酸がコレステロールを上げるのはなぜ?
飽和脂肪酸のうち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸にコレステロール値を上げる作用があり、特にラウリン酸とミリスチン酸はそれが大きいです。原因は、肝臓でのLDL受容体活性が抑制されるから。ステアリン酸は速やかにオレイン酸に転換されるので影響はほとんどないそうです。

NOTE

短鎖脂肪酸はくさいのが特徴ですが、これがエタノール(エチルアルコール=お酒のアルコール)と反応してエステルという形になると、芳香(よい香り)となるところが面白いです。

たとえば、炭素数6のカプロン酸がエタノールと反応してカプロン酸エチルとなると吟醸酒のフルーツのような香りになります。(出典:カプロン酸エチル

飽和脂肪酸は、炭素数10のカプリン酸あたりから常温では固体になります。