ラビリンチュラ類のDHAとEPAが青魚の脂肪に移る

魚の脂肪は、オメガ3のDHAやEPAが豊富です。これは、魚が食べる藻に由来するという話は以前軽く調べたので、何となく知っていました。藻は葉緑素をもっていて光合成をするから、糖を脂肪に変えて貯蔵するときは、オメガ3のα-リノレン酸が多いからDHAやEPAに変換されているのだろうくらいに思っていました。

ところが、ちょっとだけ調べ始めるとそうではないのです。DHAやEPAは、イワシやサバ、サンマなどの青魚に特に多く含まれています。しかし、これらの青魚はDHAやEPAを自らの体内で合成することができないそうです。(出典

ウイキペディアで魚介類の脂肪酸を改めて読むと、こんな風に書かれていました。

魚介類には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω-3脂肪酸である高度不飽和脂肪酸が多く含まれる。魚介類に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属である Schizochytrium 属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮されたものである。

ラビリンチュラ類をちょっとだけ調べると、藻の仲間ですが、光合成をしない従属栄養生物でした。しかも油をため込む性質を持っていました。

この記事では、ラビリンチュラ類についてお伝えしましょう。

海藻

ラビリンチュラ類とは

ラビリンチュラ類は従属栄養性の海洋性真核微生物です。藻類といってよいのか?
真核生物なので、細胞核をもち細胞器官のミトコンドリアも持っていますから酸素呼吸をします。

日本発! 世界を変えるエコ技術によれば、ラビリンチュラ類は、葉緑体をもっていませんが、コンブやワカメと近縁関係にあるそうです。

生物進化の観点からすると、クロロフィルaを持つ生物のうち、もっとも原始的なのがラン藻。このラン藻を色素体として細胞中に取り込み、緑藻、紅藻、灰色藻類が誕生。このうち緑藻類を取り込んでミドリムシが生まれ、紅藻類を取り込んで、コンブやワカメが属する褐藻類が生まれました。

コンブやワカメの祖先はもともと色素体をもっておらず、別の生物を取り込んで光合成の機能を備えるようになったのです。そして、コンブやワカメの祖先のうち、色素体を取り込まずに進化したものが、ラビリンチュラという生物になりました。

どんな姿をしているかというと、画像を勝手に使うわけにいかないので、独立行政法人NITENBRCニュース No. 18をご覧下さい。

ラビリンチュラ類の性質

ラビリンチュラ類は、どんな性質をもっているのでしょう。まずは、どこに生息しているのか。

どこに生息しているのか

宮崎大学林雅弘先生の油糧微生物ラビリンチュラによれば、

ラビリンチュラは世界中の海域に幅広く生息が確認されており、その現存量は沿岸海域で103cells/L程度のオーダーであるとされている。中でも亜熱帯から熱帯にわたるマングローブ域にはラビリンチュラが豊富に分布することが知られており、これまで数多くの株が分離されている。

北の冷たい海でなく、南の海にたくさんいるんですね。そのせいか、ラビリンチュラを検索すると、宮崎大学、鹿児島大学、九州大学の記事が出て来ます。

何を食べるのか

ラビリンチュラ類の捕食は食作用によらない細胞外消化吸収です。細菌類や真菌類、水棲の多細胞植物などを細胞表面で消化する。吸収した栄養分は細胞内に油滴として蓄積されます。

油滴の脂肪酸組成

昨年のアグリビジネス創出フェア2015に出展した独立行政法人NITEの資料を見ると、ラビリンチュラ類の3つの属の細胞内主要PUFA組成の比較が出ていました。

PUFAとは、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid)の略表記です。

オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、オブロンギキトリウム(Oblongichytrium )属についてです。

比較は、アラキドン酸(20:4)、EPA(20:5)、n-6DPA(22:5)、n-3DPA(22:5)、DHA(22:6)について行われていました。n-6はオメガ6、n-3はオメガ3と同じ意味です。

オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属はDHAが80%とn-6 DPAが15%以上を占めていました。
シゾキトリウム(Schizochytrium)属はDHAが60%とアラキドン酸が20%を占めていました。
オブロンギキトリウム(Oblongichytrium )属はDHAが60%とn-3 DPAが20%、EPAは20%を切っていますが多く含みます。

以前、石油をつくる藻類ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムという記事を書きました。オーランチオキトリウムについては少し調べていたのに、ピンと来てなかったですね。

どれもDHAが一番多いです。こういう藻を食べていれば、脂肪酸が魚の脂肪に移行して、魚の脂肪もDHAが一番多くなるわけです。

私は魚のDHAやEPAは光合成をする藻からα-リノレン酸をもらい、魚が体内で変換しているのかと思っていましたが、それは間違いです。青魚は、DHAやEPAを合成することができません。すべてラビリンチュラ類など藻がつくったものです。それを食べて自分の脂肪に蓄えたのです。

DHAやEPAは、今のところ、魚油からとられていますが、漁獲高が下がっていることと将来の海洋汚染もあり、ラビリンチュラ類のような藻に生産させるような時代が来るかもしれませんね。

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