オメガ3の脂肪酸はうつに効果がある?

魚油には抑うつ気分やうつ病を防ぐ働きがあると考えられていますが、男性には効果的ではないようです。また、うつの人にEPAを投与する場合、1日1グラムが適量で、多いと効果がでないことが書かれていました。

うつ状態

油について本をいろいろ読むようになった初期に、油の正しい選び方・摂り方―最新 油脂と健康の科学(健康双書 農山漁村文化協会) を読みました。オメガ3のα-リノレン酸を豊富に含んでいるえごま油を、オメガ6のリノール酸とバランスをとるために使いなさいという本で、とても参考になりました。

しかし、本の中には魚油がうつ病や自殺を防ぐという記事があり、その時は本当かなあ?と思いました。

最近は、会社に入っても「うつ」状態になって、休職する人が結構いるようです。改めてうつとオメガ3の関係について調べてみました。

魚をたくさん食べているとうつ病にならない?

魚をたくさん食べているとうつ病の罹患率が低いという疫学調査がある一方、魚をよく食べる日本人では、抑うつ状態とω3(オメガ3)摂取には関連が認められないそうです。

ω3系多価不飽和脂肪酸と気分障害を読みました。

この論文では、1998年頃からの調査結果がいくつか紹介されています。疫学調査は、地域や集団を調査し、病気の原因と考えられる要因と病気の発生の関連性について、統計的に調査することです。対象人数が多く、時間も長くかけるのが特徴です。

あまり魚を食べないドイツ、ニュージーランド、カナダ、フランスにうつ病が多く、次いでアメリカ、プエルトリコ、韓国、台湾、日本と続きます。もちろん、台湾、韓国、日本はよく魚を食べます。

魚の消費量が多いほどうつ病の罹患率が低いというものである。また彼らは日本やアイス ランドが緯度の割に季節性気分障害が少ないのも魚の消費量が多いためだと報告している。

ただ実際に、日本で行われた健常者(n=517)を対象とした横断研究では、抑うつ状態とω3摂取では関連は認められない。日本人がすでに多くの魚をとっており、差が見られないためかもしれない。

と書かれていました。魚を食べている国ほど、うつ病の患者が少ないそうです。

季節性気分障害とは、うつ病の一種で、秋または冬に抑うつが始まり、春や夏になると治まるという特有のサイクルを繰り返すものです。日照時間と関係があるといわれ、日照時間の短くなる季節に始まります。緯度が高い地域で多いそうです。緯度が高い地域は、冬になると日照時間がとても短くなります。日照時間と抑うつは関係が深いのだろうと思います。

抑うつ状態にならないために最低限摂っていた方がよい量があるのかもしれない

日本では魚をたくさん食べているから、抑うつ状態にある人とそうでない人に摂取量による差が見られないというのは、日本人として感覚的にわかります。そんなことは関係ないだろうと思います。

気分がダウンする人は魚を食べていても食べていなくてもそうだと思います。

しかし、上で紹介した2つの話を考えると、オメガ3(ω3)の魚油には最低限摂っていた方がよい量が想定されますが、多く摂ればより効果を上げるというわけではない感じですね。

オメガ3は男性には効かないかもしれない?

魚あるいはω3(オメガ3)摂取量とうつ症状、うつ病などの症状との関連は、男性にはほとんどなく女性に顕著に見られます。

この論文には、コホート研究について興味深いことが書かれていました。コホート研究というのは、ある時点から未来へ向かって調べる研究です。国立がん研究センターのコホート研究の解説が一番わかりやすいです。

この場合は、普段、1日に魚をどのくらい食べているか、もしくは1日のω3 摂取量を調べ、それから何年間にわたって、抑うつ気分や、うつ病エピソード、自殺などについて調査された研究です。

まず、読んでみてください。

29,133人のフィンランド男性(50〜69 歳)を対象に9年間追跡した調査では、魚あるいはω3 摂取量と、抑うつ気分、うつ病エピソード、自殺とに関連は認められなかった。

スペインで2年間追跡した7,903 人を対象にしたコホート研究では、魚あるいはω3摂取量と精神障害(うつ病、不安、ストレス、抗うつ剤あるいはトランキライザーの使用)との関連が認められた。

しか し、男性では全然関連が認められていない。米国では、3317人の若年者(18〜30歳)を対象に10年追跡しうつ病発症率を調べているが、参加時のω3(EPA+DHA)の摂取が多いほど、うつ病になる危険率が低いという結果であった。

また、その関連は男性ではほとんど見られず女性で顕著であった。

しかし、同じ米国でも最近報告 された54,632人の看護婦(50〜77歳)を10年間追跡した研究によると、EPAやDHAはうつ病の発生(2,823 人)とは関連がなかった。

ただしαリノレン酸が発症のリスクを抑えており、特にリノール酸(ω6系)の摂取の少ない集団では更に効果が高かった。コホート研究からはω3にはうつ病を予防効果がありそうだが、その効果は女性に限定的かもしれない。

論文を読ませていただく面白さの一つは、こんなこぼれ話が出てくるところです。フィンランドでもスペインでもアメリカでも男性の場合、オメガ3の脂肪酸の摂取量とうつ病との関係が認められなかったが、女性では有効であるらしいですね。

α-リノレン酸を摂り、リノール酸の摂取が少ないと効果的

最後の部分は、EPAやDHAはうつ病の発生と関係なかったがα-リノレン酸が効果を現し、リノール酸が少ないとさらに効果がでるという結果です。5万人以上を対象にした調査なので、興味深いです。

しかし、これまで魚を食べることが効果的と書いていたのに、EPAがうつ病の発生と関係がなく、α-リノレン酸が効果を現しているという結果は、意外でした。魚の脂肪にはα-リノレン酸がが含まれていないわけではありませんが、EPAやDHAに比べるとごく少量です。

EPAは1日1グラムが効果的?

この論文中の臨床試験の箇所では、こんなことが書かれていました。1gでは効果があったが、2g、4gと増やすと効果がなくなるというのです。

Peetらのグループは、うつ病患者に対して用量反応試験を二重盲検法で行った。

1、2、4gの3群とプラセボ群とを比較した結果、1gでは効果があったが、2、4gの群では効果は認められなかった。

何故そのような結果になったのかは詳しく考察されていないが、その後世界各国で行われた試験ではEPAを1g前後に設定されたものが多く、この試験結果に影響されたものと考えられる。

EPAを1g前後にするようになったというのは、EPAだけを与えたからなのかどうかこの文面だけでは分かりません。

この実験の論文は、A dose-ranging study of the effects of ethyl-eicosapentaenoate in patients with ongoing depression despite apparently adequate treatment with standard drugs. というタイトルでした。

赤くしたのはイコサペント酸エチルという物質名がでていたからです。これは、Epadelという薬の成分だそうです。脂肪酸EPAとエチルアルコール(お酒のアルコール)のエステルです。

やはりEPAだけを投与した試験のことをいっていて、EPAを1g前後に設定にしたものがよいらしいという話ですね。もちろん、1日につきの話です。

また、こんなことも書かれていました。ご参考まで。

EPA含有率が60%以上で効果はあるが、それ未満で(すなわちDHAが多いと)効果は減弱するようである。

NOTE

オメガ3の脂肪酸はうつに効果があると聞くと、そういうものかなと思いますが、魚を食べているとうつに効果があると聞くと、「うそだろう~?」と思います。私は魚をよく食べる方だからです。

気分の浮き沈みはいつもあります。ものごとがうまく行けばとても嬉しいし、うまくいかなければガッカリして時には落ち込むことがあります。同じ事をネチネチ考えることもあります。多分、たいていの方も同じように思うのではないかな。

うつ病対策として、オメガ3の脂肪酸を最低限摂っていた方がよい量があるのかもしれません。しかし、魚をよく食べる日本人にはほとんど関係ない話ではないかなと今のところ思います。

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