オメガ3の脂肪酸はうつに効果がある

油について本をいろいろ読むようになった初期に、油の正しい選び方・摂り方―最新 油脂と健康の科学を読みました。オメガ3のα-リノレン酸を豊富に含んでいるえごま油を、オメガ6のリノール酸とバランスをとるために使いなさいという本で、とても参考になりました。

しかし、ω3の魚油が「うつ」に効果があるとも書かれていて、それはその時は本当かなあ?と思いました。私に油についての知識がほとんどなかったので、なぜ油がうつと関係があるのか理解できませんでした。

最近は、会社に入っても「うつ」状態になって、休職する人が結構いるようです。私が若い頃は、もし、自分がうつであると診断されたら人には言えない時代でした。今は、「わたしうつなの」なんて平気でいえる時代です。時代が変わったなと思いますが、一方、うつに悩まされている人の数がとても増えたのだと思います。

この記事では、うつとオメガ3の脂肪酸の関係について調べてみました。

脳は脂質のかたまりである

ヒトの脳は乾燥重量の約60%は脂質であることが知られています。なぜ乾燥重量と書くかというと、一番多いのは水だからです。油のことを調べていない時だったら、私は「ふーん脂質が多いのか」で終わりですが、今はちがいます。

少しは知識がつき、脂肪の性質が脂肪酸によって決まることが分かりました。普段何を食べているかによって、体の中にある脂肪の性質が変わってしまうのです。

単純に考えて、脳の働きは食べ物の影響を受ける可能性があると思います。

脳は神経細胞が発達していて、さまざまな信号をやりとりしていますが、神経細胞は、他の細胞に比べて細胞膜の割合が多いそうです。細胞膜は、リン脂質、コレステロール、など脂質から構成されます。したがって、細胞膜に富む細胞が多い脳には脂質が多くなります。

リン脂質には、脂肪酸が2本ついています。DHAはリン脂質の脂肪酸として存在しています。また、EPAはほとんど脳内に存在していませんが、DHAとEPAは脳の脳血管関門を通過します。EPAは脳内で酵素によってDHAに転換されると考えられています。

うつ

さまざまな疫学調査

ω3系多価不飽和脂肪酸と気分障害を読ませていただくと、1998年頃からの調査結果がいくつか紹介されていました。疫学調査は、地域や集団を調査し、病気の原因と考えられる要因と病気の発生の関連性について、統計的に調査することです。対象人数が多く、時間も長くかけるのが特徴です。

あまり魚を食べないドイツ、ニュージーランド、カナダ、フランスにうつ病が多く、次いでアメリカ、プエルトリコ、韓国、台湾、日本と続きます。もちろん、台湾、韓国、日本はよく魚を食べます。

魚の消費量が多いほどうつ病の罹患率が低いというものである。また彼らは日本やアイス ランドが緯度の割に季節性気分障害が少ないのも魚の消費量が多いためだと報告している。ただ実際に、日本で行われた健常者(n=517)を対象とした横断研究では、抑うつ状態とω3摂取では関連は認められない。日本人がすでに多くの魚をとっており、差が見られないためかもしれない。

と書かれていました。魚を食べている国ほど、うつ病の患者が少ないそうです。

季節性気分障害とは、うつ病の一種で、秋または冬に抑うつが始まり、春や夏になると治まるという特有のサイクルを繰り返すものです。日照時間と関係があるといわれ、日照時間の短くなる季節に始まります。緯度が高い地域で多いそうです。緯度が高い地域は、冬になると日照時間がとても短くなります。日照時間と抑うつは関係が深いのでしょうね。

日本で魚をたくさん食べているから差が見られないというのは全くその通りだと思います。若い人たちが魚を全く食べないという話をあまり聞かないので、気分がダウンする人は魚を食べていても食べていなくてもそうだと思います。

オメガ3は男性には効かないかもしれない?

この論文には、コホート研究について興味深いことが書かれていました。コホート研究というのは、ある時点から未来へ向かって調べる研究です。この場合は、普段、1日に魚をどのくらい食べるか、もしくはω3 摂取量を調べ、それから何年間にわたって、抑うつ気分や、うつ病エピソード、自殺などについて調査された研究です。

まあ、読んでみてください。

29,133人のフィンランド男性(50〜69 歳)を対象に9年間追跡した調査では、魚あるいはω3 摂取量と、抑うつ気分、うつ病エピソード、自殺とに関連は認められなかった。スペインで2年間追跡した7,903 人を対象にしたコホート研究では、魚あるいはω3摂取量と精神障害(うつ病、不安、ストレス、抗うつ剤あるいはトランキライザーの使用)との関連が認められた。

しか し、男性では全然関連が認められていない。米国では、3317人の若年者(18〜30歳)を対象に10年追跡しうつ病発症率を調べているが、参加時のω3(EPA+DHA)の摂取が多いほど、うつ病になる危険率が低いという結果であった。また、その関連は男性ではほとんど見られず女性で顕著であった。

しかし、同じ米国でも最近報告 された54,632人の看護婦(50〜77歳)を10年間追跡した研究によると、EPAやDHAはうつ病の発生(2,823 人)とは関連がなかった。ただしαリノレン酸が発症の リスクを抑えており、特にリノール酸(ω6系)の摂取の少ない集団では更に効果が高かった。コホート研究からはω3にはうつ病を予防効果がありそうだが、その効果は女性に限定的かもしれない。

論文を読ませていただく面白さの一つは、こんなこぼれ話が出てくるところです。フィンランドでもスペインでもアメリカでも男性の場合、オメガ3の脂肪酸の摂取量とうつ病との関係が認められなかったが、女性では有効であるらしいですね。

最後の部分は、EPAやDHAはうつ病の発生と関係なかったがα-リノレン酸が効果を現し、リノール酸が少ないとさらに効果がでるという結果です。5万人以上を対象にした調査なので、興味深いです。

オメガ6のリノール酸が変化したアラキドン酸と、オメガ3のEPAは生理活性物質エイコサノイドの材料として使われ、アラキドン酸は炎症を促進するものになり、EPAは炎症を鎮めるものになるので、働きが拮抗しています。

そのため、α-リノレン酸とリノール酸はバランスをとって摂る必要があるといわれています。しかし、EPAがうつ病の発生と関係がなく、α-リノレン酸が効果を現しているという結果は、意外でした。

EPAは1日1グラムが効果的?

文中、臨床試験のところでは、こんなことが書かれていました。1gでは効果があったが、2g、4gと増やすと効果がなくなるというのです。

Peetらのグループは、うつ病患者に対して用量反応試験を二重盲検法で行った。1、2、4gの3群とプラセボ群とを比較した結果、1gでは効果があったが、2、4gの群では効果は認められなかった。何故そのような結果になったのかは詳しく考察されていないが、その後世界各国で行われた試験ではEPAを1g前後に設定されたものが多く、この試験結果に影響されたものと考えられる。

EPAを1g前後にするようになったというのは、EPAだけを与えたからなのかどうかこの文面だけでは分かりません。

この実験の論文は、Peet M, Horrobin DF. A dose-ranging study of the effects of ethyl-eicosapentaenoate in patients with ongoing depression despite apparently adequate treatment with standard drugs. Arch Gen Psychiatry 59:913-919, 2002.というタイトルでした。

赤くしたのはイコサペント酸エチルという物質名がでていたからです。これは、Epadelという薬の成分だそうです。脂肪酸EPAとエチルアルコール(お酒のアルコール)のエステルです。

やはりEPAだけを投与した試験のことをいっていて、EPAを1g前後に設定にしたものがよいらしいという話ですね。もちろん、1日につきの話です。

また、こんなことも書かれていました。ご参考まで。

EPA含有率が60%以上で効果はあるが、それ未満で(すなわちDHAが多いと)効果は減弱するようである。

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