食べ物の酸化コレステロール

酸化コレステロールは、卵の加工製品や、フレンチフライドポテト、マヨネーズ、ビスケットなどに比較的多く含まれていて、動脈硬化などの原因になり、リノール酸がアラキドン酸に変化する反応を促進するので、プロスタグランジンなどエイコサノイドがつくられ炎症の原因になるかもしれない。

ベーコン

コレステロールが酸化するとよくないらしい

コレステロールと聞くと、すぐにLDL(悪玉コレステロール)とHDL(善玉コレステロール)を思い出します。そして、LDLが酸化されると動脈硬化の原因になる話もよく聞きます。

LDLやHDLはコレステロールそのものではない

しかし、LDLやHDLはコレステロールそのものではなく、リポタンパクといって、リン脂質と遊離コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド:TG)とコレステロールエステルからなるものでした。

肉には脂肪の他に脂質としてコレステロールそのものが含まれています。肉を焼くと、肉に含まれるコレステロールが酸化します。

どうも、それがあまり体によろしくないようなのです。この記事では、肉にどのくらいコレステロールが入っていて、コレステロールは加熱するとどのように酸化するのか書きます。

普段食べている肉にコレステロールはどのくらい含まれているか

普段、肉を食べるときは、ほとんど鶏肉になりました。トンカツは好きだし、カツ丼も食べたいと思いますが、食べなくなるとどうでもよくなるものですね。

鶏肉も脂肪とカロリーが低い胸肉を買うようになりました。そして料理するときは、ついている皮をはがして捨てます。カレーを作るときはうま味がでないので少し困ります。

豚肉は好きなのですが買わなくなりました。牛肉はもともと食べる習慣があまりないのと高いので買いません。たまに羊肉を買って来てジンギスカンをします。

肉に含まれるコレステロールはどれもそれほど変わらない

しかし、文科省の食品データベースで調べると、コレステロールに関しては、とり皮が少し多いくらいで、あまり変わりませんでした・・・。

食品100gあたり
食品成分 エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物 コレステロール
ぶたかたロース脂身つき生 253kcal 17.1g 19.2g 0.1g 69mg
ぶたかたロース脂身生 688kcal 5.4g 70.7g 0 73mg
若鶏肉むね皮つき生 145kcal 21.3g 5.9g 0.1g 73mg
若鶏肉むね皮なし生 116kcal 23.3g 1.9g 0.1g 72mg
若鶏肉もも皮つき生 204kcal 16.6g 14.2g 0 89mg
若鶏肉もも皮なし生 127kcal 19.0g 5.0g 1.0g 87mg
にわとり皮むね生 492kcal 9.4g 48.1g 0 110mg
にわとり皮もも生 513kcal 6.6g 51.6g 0 120mg

食品の酸化コレステロール

コレステロールは下のような構造式で表されます。だんだん慣れてくると、炭化水素のCとHを省略したこの書き方の方が見やすく、また、覚えやすくなってきました。

くさびのような、結合する手の先に何も書かれていない太くなった線の先には、CH3がつきます。この図でHだけわざわざ書いてあるのは、水素の位置を立体的に表しているためです。

構造式のくさび実線と点線の違い

コレステロールの構造式を見ると、実線のくさびと点線のくさびの2種類あります。

実線のくさびは、画面より自分の方向に、点線のくさびは、画面の向こう側に手が向かっていることを示しています。立体的な位置関係を表しています。

水素がついたくさびは別に省略しても(描かなくても)構いません。炭素(C)には結合する手が4本あり、隣の炭素(C)と結合する2本と、残りの2本の手には水素(H)が結合するのが決まりだからです。

コレステロール

コレステロール

コレステロールの炭素番号

さらに、今回はコレステロールの炭素番号を書いた図を載せておきます。

コレステロール炭素番号

炭素番号は、下図を見た時に、どの炭素に酸素(O)や水酸基(OH)がついているか目印になります。

代表的な酸化コレステロールは8個

食べ物の酸化コレステロールはどのようにできていくか、代表的な8個の酸化コレステロールの図を載せます。食事と酸化コレステロールを読ませていただきました。

酸化コレステロール

構造式の波線

図が小さくて見にくいかもしれませんが、クリックしていただけると大きくなります。たとえば、図中左にある7-ヒドロペルオキシコレステロールに不思議な波線がでてきます。

波線

この波線は、OOHの位置が実線のくさびと点線のくさびのどちらかになるという意味だそうです。

図に描いた通り、コレステロールが酸化されると次の8つの酸化コレステロールができます。

  • 7-ヒドロペルオキシコレステロール
  • 7α-ヒドロキシコレステロール
  • 7β-ヒドロキシコレステロール
  • 7-ケトコレステロール
  • 5,6-エポキシコレステロール
  • コレスタン-3β,5α,6β-トリオール
  • 20-ヒドロキシコレステロール
  • 25-ヒドロキシコレステロール

これらは、構造式も含めて覚える必要はありません。ただ、コレステロールが酸化されると酸化コレステロールになり、いくつか種類があるということを知っておくために書きました。

酸化コレステロールは動脈硬化の原因にもなる

食事と酸化コレステロールによると、食事から入ってくる微量のコレステロール酸化物(酸化コレステロール)が、動脈硬化をはじめとするいろいろな病気の主要な原因となる可能性があると多くの研究で指摘されているそうです。

油の酸化は気にする人が多くなりましたが、コレステロールの酸化について、書いている私も今日まで気にしたことはありませんでした。

卵製品に多い

論文を読んでいくと、食品全体では、5,6-エポキシコレステロールと7-ケトコレステロールが代表的な酸化コレステロールで、卵製品に多く含まれます。

何しろ、卵黄はコレステロールが一番多い食品です。

食品全体には,epoxycholesterol(EpoxyC)あるいは7-ketocholestero1(7-KetoC)が比較的高い濃度で存在する。

食品を個別に見ると,卵製品は,原料中のコレステロールレベルが高いために,その乾燥加工中,あるいは加工処理後の保存過程でコレステロールが酸化され,そのレベルが高くなるのではないかと考えられる。

乾燥させた加工食品に含まれています。

卵、乳製品、特にバターオイルに多かったです。バターオイルとは、「バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去したもの」だそうです。バターオイルというものがあるとは知りませんでした。

畜産品では、室温で3年保管されたフリーズドライポーク(豚肉)にとても多く含まれていました。他の商品と比較すると10倍違います。フリーズドライポークって見たことがありませんが、ペットフードなどに使われているようです。

フリーズドライされているとはいえ、3年保管されている状態が当たり前なのか、それは分かりませんでした。

フレンチフライドポテト、マヨネーズ、ビスケットなどにも

もっと普通のものにも含まれています。

その他の食品では,総酸化コレステロールレベルは前記の食品と比べると低いが,乳児用の離乳食品,ファーストフードのフレンチフライドポテト,マヨネーズ,ビスケット等の中に酸化コレステロールが存在する。

ファーストフードに酸化コレステロールが多いことは最近の研究でも指摘されている。また,離乳食品にも酸化コレステロールが存在するので,市販離乳食品の多用や保存状態の悪い製品の摂取は,生体防御機能が未熟である乳幼児の健康に何らかの影響を与えることが懸念される。

ポテトサラダの好きなマヨラーの私は困ってしまいます。

酸化コレステロールは吸収されやすいらしい

酸化コレステロールは、多価不飽和脂肪酸の酸化物などに比べて、小腸から吸収されやすいと書かれています。

この論文は2002年にオレオサイエンスという雑誌に掲載されていたものです。この2002年当時、酸化コレステロールについては分からないことが多かったようです。

最近のことが知りたいですが、最近の記事を探すには大きな都立図書館に行くか国会図書館にいかないと難しいようです。残念ながらネットでは見つかりませんでした。

しかし、このようなことが書かれていました。

しかし,いずれのデータからも,多価不飽和脂肪酸の酸化物等と比べるとはるかに高いレベルで小腸から吸収されることが指摘されている。(中略)

筆者らの実験では,ラットの胸管リンパ管にカテーテルを挿入した後に,胃内に調製した酸化コレステロール混合物の人工ミセルを強制投与して,カテーテルによりリンパを回収した結果,投与24時間後までに回収したリンパ中に放出された総酸化コレステロール濃度,すなわち,小腸を介して吸収された酸化コレステロールの割合は約35%であることを突き止めた。(中略)

また,ミセルに共存させたトリグリセリドの吸収が低くなったので,酸化コレステロールは脂肪吸収に障害を与える可能性がある。

どうも、酸化コレステロールは、中性脂肪(TG:トリグリセリド)より優先的に吸収されるようです。脂質(脂肪やコレステロール)は、最初に胆汁酸によってミセルとなって、未完成のカイロミクロンとしてリンパを流れて左鎖骨下静脈から血管の中に入るのでした。

カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配る
小腸細胞内にミセルとして入ってきたトリグリセリド(中性脂肪)とコレステロールは、今度は、リン脂質とアポタンパク質からできたリポタンパク質にくるまれ、血液中を流れカイロミクロンとして各組織へトリグリセリド(中性脂肪)を運搬します。もう少し...

そして、脂肪は消化され、一度、モノグリセリドと脂肪酸2本に分解されるのですが、コレステロールは分解されずそのままミセルにくるまれます。

食べた脂肪は分解されるがコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞ
食べ物に含まれる脂肪はモノグリセリドと2本の脂肪酸に分解されますが、コレステロールは分解されません。これらは胆汁酸によってミセルとなり小腸から体の中に入ってきます。コレステロールは炭素数27で意外とサイズが小さいのです。コレステロール...

リノール酸がアラキドン酸に変わりやすくなる

さらに、油との関係ではこんなことが書かれていました。

リノール酸不飽和化律速酵素活性は,一般にコレステロール摂取により低下するが,酸化コレステロールを摂取させると酵素活性が上昇することが明らかにされている。

組織脂質の脂肪酸組成にもこの作用が影響し,リノール酸に対するその代謝産物の比率は酸化コレステロールを摂取した場合に高くなる。

よって,生体膜のアラキドン酸レベルも高くなり,その代謝産物であるエイコサノイド類のインバランスが生じ,動脈硬化あるいは様々な炎症の引き金になることが考えられている。

リノール酸は炭素数18の不飽和脂肪酸で、炭素の二重結合を2個持っていましたが、アラキドン酸は炭素数20で炭素の二重結合は4個あります。

オメガ6の脂肪酸とはω端から6番目の炭素に二重結合がある
オメガ6の脂肪酸は、脂肪酸のカルボキシ基(-COOH)とは反対側の端、オメガ端から6番目の炭素に二重結合がある脂肪酸です。オメガはギリシャ文字で最後の文字です。終わりという意味があります。位置を意味しています。

酸化コレステロールがあると、リノール酸がアラキドン酸になることが促進されるようです。炭素数20のアラキドン酸は、プロスタグランジンなどエイコサノイドと呼ばれる生理活性物質になります。すると、炎症が起きやすくなるようになるかもしれません。

プロスタグランジンE2が問題だ
リノール酸を摂りすぎるとよくないといわれる理由は、変換されたアラキドン酸が炎症やアレルギー反応をひどくするプロスタグランジンの材料になるからだといわれます。そのプラスタグランジンは、プロスタグランジンE2(PGE2)が主役のようです。...

NOTE

冒頭にも書きましたが、コレステロールってLDLと総コレステロールを気にしてHDLが上がるとよいと思っていただけでした。

油の酸化を気にするように、コレステロールの酸化を気にするような時代になるかもしれません。

1970年代、特に前半は、肉も油もそれほど摂れない時代でした。案外、そういう時代の方がよかったのかもしれませんね。1990年ころのバブル時代に油をたくさん使う時代になりましたが、その前の1980年代に食生活がとても変わった印象があります。

ところで、肉だけを食べ続ける実験についてご紹介したことがあります。肉だけを食べて生活するとどうなるか?ご興味がありましたら読んでみてください。

コレステロールについての他の記事は、コレステロールについて知っておきたいことをご覧下さい。

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