脂肪とコレステロールの違いについて

脂肪とコレステロールは、似たようなものだろうと思っていましたが、構造式を見るとまったく違うものだと分かります。脂肪はからだが使うエネルギーをためておくのが一番の役割です。それに対してコレステロールは、細胞膜、胆汁酸、ステロイドホルモンの材料になります。

肉

脂肪とコレステロール。健康診断のシートを見ると親戚のようなものだと思うのですが、違いがよく分かりません。でも、毎日焼き鳥を食べながらビールを飲んでいると確実に中性脂肪と悪玉コレステロール(LDL)と総コレステロールの数値が上がることだけはわかります。

脂肪とコレステロールは、一体どのような違いがあるのでしょう?

スポンサーリンク




脂肪とコレステロールは構造がまったく違う

まず、健康診断で気になる中性脂肪と、サラダ油のような食品の油は同じものだと思ってください。脂肪=油です。

コレステロールと脂肪を比べてみるには、嫌いな方が多いと思いますが、構造式を並べてみればよく分かります。

油は構造が簡単

油は構造がとても簡単です。グリセリンに脂肪酸が3本結合してできています。簡単に書くとこんな感じです。

脂肪酸

脂肪の構造式は見つからない

しかし、脂肪の具体的な構造式を探してみると、まず見つかりません。

それは脂肪が、グリセリンに脂肪酸が3本結合したものと決められていても、脂肪酸の種類がいくつもあるので、3本の組み合わせが何通りもできるからです。

脂肪の一例を構造式で書きましょう。これはココアバターに含まれる脂肪の組成(の1つ)です。3本の脂肪酸のノコギリの歯みたいなギザギザは炭化水素を意味しています。

分からない方は脂肪酸の書き方で困ることと、脂肪を省略なしで実際に書いてみるを読んでみてください。

ココアバターの組成

ココアバターの組成

コレステロールは環構造

一方、コレステロールは形がはっきりしているので、構造式があります。

構造は脂肪に比べて少し複雑です。環構造を見ただけで嫌な気持ちになります。だいぶ慣れてきましたけれど。

こうしてコレステロールの構造式を見ただけで、脂肪とはまったく違うものだと分かりますね。

コレステロール

コレステロールの分子式は、C27H46Oです。炭素(C)が27個、水素(H)が46個、酸素(O)が1個からできています。

脂肪とコレステロールで共通しているのは、C(炭素)、H(水素)、O(酸素)だけでできているところです。構造が違うので役割も違います。

脂肪はエネルギー源である

脂肪は、食べ過ぎや運動不足でお腹まわりについてきますが、これはラクダのこぶと一緒で余分なエネルギーをためているのです。

脂肪の一番の役割は、貯蔵燃料です。たくさん運動したり断食すると減って行きます。

脂肪は、脂肪細胞に貯蔵されます。詳しい話は、脂肪をため込む脂肪細胞は肥満すると増えるよという記事に書きました。

余分なブドウ糖や燃料にならない脂肪は、体の中にたまっていきます。もともと脂肪は、エネルギーを保存するためのものなので、保存されやすい仕組みが...

また、脂肪のカロリーは、1gの中に9kcalあり、食品の中でダントツに熱量が高いです。燃料として性能がよいです。他の食品と比べてどのくらい違うか、油はカロリーが高いが油の種類で違いがある?他の食品ともカロリーを比較してみたを読んでみてください。

油はカロリーが高いというのは常識です。どのくらいカロリーがあるのか?また食用油には種類がありますが、それによってカロリーが変わるのかどうか。...

脂肪はコレステロールをつくる材料にもなる

さらに、脂肪はコレステロールをつくる材料になります。

脂肪は体の中でグリセリンと脂肪酸に切り離されます。さらに長い炭化水素鎖である脂肪酸はβ酸化といって、炭素数2個ずつ短く切られ、アセチルCoAになります。

アセチルCoAは、コレステロールをつくる材料になります。コレステロールの生合成はアセチルCoAからスタートするという記事を読んでみてください。

アセチルCoAからコレステロールが合成される過程を詳しく説明します。アセチルCoAからつくられるということは、糖にも脂肪にも関係があり、普通...

コレステロールはなかなか重要だ

一方、コレステロールは、健康診断ではひどく嫌われているのに、体の中ではとても大切にされ、リサイクルされる仕組みができています。

コレステロールはエネルギーにならない

脂肪とコレステロールの最大の違いは、同じ脂質に分類されていても、燃料(エネルギー源)になるかならないかだと思います。

コレステロールは燃料になりません。

燃料になるかならないかは、代謝の経路を調べると分かります。脂肪は、脂肪酸がアセチルCoAになり、TCA回路に入りますが、コレステロールにはその経路がありません。

定期的に運動すると、いわゆる悪玉コレステロール(LDL)の値が改善しないわけではありませんが、運動すれば、脂肪もコレステロールも燃やすことができると考えるのは間違いです。

私はつい最近までコレステロールも分解されて体の中で燃やされるのだとばかり思っていました・・・。こういうことが時々あるので、詳しく調べると面白いのです。

細胞膜を構成する物質の一つ

コレステロールは、細胞膜を構成する材料になります。

細胞膜は、リン脂質を基本とする二重膜構造です。リン脂質はリン酸部分と2本の脂肪酸が並んでできています。とてもゆるい構造です。

そのリン脂質の間にコレステロールが1個ずつ入り、構造を補強するのと、細胞膜が低温下で流動性が下がることを防いでいます。

細胞膜の単位はリン脂質だけど、コレステロールはその隣に存在するに詳しく書きました。

コレステロールのことを調べていたら、ヒトのような真核細胞生物では、細胞膜にリン脂質と並んでコレステロールが存在していることが分かりました。...

ちなみに、コレステロールがあるのは動物細胞です。植物細胞にはありません。

胆汁酸の材料になる

コレステロールは肝臓で胆汁酸に変えられ、胆のうに蓄えられ、必要時に胆汁を介して十二指腸に排出されます。

ところが、一度排出された胆汁酸はほとんどすべて回腸で吸収され、そして98~99%は門脈を経て肝臓に戻ります。このようにリサイクルの仕組みがあり、とても大切にされているのです。

コレステロールは胆汁酸(塩)として排出されるがほとんど回収されるに書きました。

コレステロールはどのように体外に出るのでしょう?コレステロールは食べ物によって入って来たり肝臓でつくられますが、どうやって出て行くのか、今度...

ステロイドホルモンの材料になる

ステロイドホルモンは、副腎皮質ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンなどの総称です。

人のアブラはなぜ嫌われるのかにはこのように書かれています。

ステロイドホルモンは、体の働きを調整するために欠かせないホルモンの仲間で、副腎皮質ホルモンは体液中の電解質のコントロールやストレスへの対応、女性ホルモンは乳腺の発達、男性ホルモンは精子形成と、その働きは多岐にわたっています。

食品に脂肪とコレステロールはどのくらい入っているものなのか

これまで書いてきて、脂肪とコレステロールはまったく別な物だということが分かりました。特に、コレステロールは動物の細胞膜にあるのですから、細胞であればどの細胞にも入っています。

食品分析では、タンパク質、脂質、炭水化物が三大栄養素ですが、脂質の中に脂肪もコレステロールも含まれています。

脂質の大部分は脂肪ではないかと思います。実際コレステロールはどのくらい含まれているものなのか、具体的にそれぞれ調べてみました。

下の表の通りです。

食品100gあたり成分量(出典
うし
リブロース
脂身つき生
ぶた
ロース
脂身つき生
にわとり若
もも
皮つき生
水分 34.5g 60.4g 68.5g
タンパク質 9.7g 19.3g 16.6g
脂質 56.5g 19.2g 142g
炭水化物 0.1g 0.2g 0
トリアシルグリセロール当量 53.4g 18.5g 13.5g
コレステロール 86mg 61mg 89mg

トリアシルグリセロールとは脂肪のことです。

トリアシルグリセロール当量とは、脂肪酸成分表の各脂肪酸量から、トリアシルグリセロールに換算した量として算出された重量です。

脂肪とコレステロールは一緒に運ばれる

コレステロールと脂肪は脂質なので水に溶けません。肉を食べると脂肪だけでなくコレステロールも食べることになります。脂肪の消化については、以前書いた通り、膵臓からのリパーゼで脂肪酸と、脂肪酸を一つつけたままのグリセリン、モノグリセリドまで分解されます。

このとき、コレステロールも、脂肪酸やモノグリセリド、胆汁と一緒に丸く固まり、「ミセル」というものになって、小腸の中に入ります。

このあたりのことは、食べたコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞという記事で詳しく書きました。

食べ物に含まれるコレステロールは、小腸からそのまま体の中に入ってきます。ご存知でしたか?運動すれば、脂肪やコレステロールなど余分なものが燃え...

脂肪とコレステロールが親戚のように感じられるのは、体の中に一緒に入って運ばれていくからでしょう。

リポタンパク

血液の中で、脂肪酸とモノグリセリドはまた脂肪に戻ります。コレステロールも脂肪も水に溶けませんから、血液中をうまく流れて行くには、特別な輸送手段が必要になります。それがリポタンパクと呼ばれるものです。

リポタンパク質

リポタンパク質

リボタンパクは、リン脂質、アポタンパク、TG(トリグリセリド)、遊離コレステロール、コレステロールエステルなどで構成されています。

図のように球形をしていて、外側をアポタンパク、水と親和性があるリン脂質と遊離コレステロールがおおっていて、中に水と混ざらないTG(トリグリセリド:中性脂肪)やコレステロールエステルが埋め込まれています。

アポタンパクは、リポタンパクが細胞内に取り込まれる時に、リガンド(受容体と結合する物質)と呼ばれるものになります。ドアを開ける鍵みたいなものです。

リポタンパクには、カイロミクロン、VLDL(超低比重リポタンパク)、LDL(低比重リポタンパク)、HDL(高比重リポタンパク)と4種類あります。

脂肪とコレステロールを配る仕組み

小腸から吸収された脂肪酸とモノグリセリドは、すぐにTG(トリグリセリド)に戻り、コレステロールとともにカイロミクロンとなり、TG(トリグリセリド)を配りながら肝臓に送られます。

詳しくは、カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配るに書きました。

前記事、食べたコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞでは、コレステロールが消化酵素で分解されることなく、胆汁酸がつくるミセルの中に中性...

肝臓では新たにVLDL(超低比重リポタンパク)がつくられ、血液にのって全身をめぐります。VLDL(超低比重リポタンパク)は、肝臓で合成されたTG(トリグリセリド)を脂肪細胞に配達するのが役割です。

TG(トリグリセリド)を配り終えたVLDLはLDL(低比重リポタンパク)になり、今度はコレステロールを各組織に配給します。

詳しくは、VLDLからコレステロールを配るLDLへに書きました。

この記事では、食べ物からではなく、肝臓で作られたコレステロールと中性脂肪(TG)がどのように組織に配られるのか。VLDLができ、LDLに変化...

一方、HDL(高比重リポタンパク)は小腸と肝臓でつくられ、動脈壁にたまったコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをします。このために、HDL(高比重リポタンパク)は善玉コレステロールと呼ばれています。

詳しくは、余分なコレステロールを回収するHDLに書きました。

この記事では、善玉コレステロールといわれるHDLが小腸や肝臓から生まれ、組織からコレステロールをもらいながら、肝臓に戻るまでを説明します。...

まとめ

脂肪とコレステロールは、水に溶けないという意味で脂質に分類されていますが、構造が違う、それぞれまったく別のものです。

脂肪は主にエネルギー源として使われます。コレステロールは、細胞膜を始め、胆汁酸やステロイドホルモンの材料になります。

胆汁酸として十二指腸に排出されたコレステロールは98~99%回収されて再利用されます。

また、食べものから体に入ってきた脂肪とコレステロールは、一緒にリポタンパク質として運ばれます。

スポンサーリンク




フォローする

スポンサーリンク