煮干しとオメガ3脂肪酸

煮干しといえば、かたくちいわしの煮干しが一般的です。しかし、100gあたり0.7g程度しかオメガ3脂肪酸がありません。煮干しは、もともと原材料の脂が少ない方がよく、塩水で煮熟して干すことで生より脂がぐっと減ります。

にぼし

煮干しは高タンパクで低脂肪

煮干しは5種類ありましたが、ごく普通に、煮干しといえばかたくちいわしの煮干しでしょう。データは日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用しています。

たんぱく質がとても多く、脂質は少なめ炭水化物は、ほぼないのが特徴です。ほたてがいに炭水化物が多いのは、グリコーゲンをためる性質があるからです。

煮干しのオメガ3は少ない

100gあたり、いかなごで1.4g程度、かたくちいわしで、0.7g程度です。煮干しを100g食べる人はいないでしょう。

煮干しを食べたらどのくらいオメガ3の脂肪酸が摂れるかなと考えることは現実的ではありません。

食品100gあたりの栄養成分
いかなご/
煮干し
かたくち
いわし/
煮干し
ほたてが
い/貝柱/
煮干し
さくらえ
び/
煮干し
とびうお
/煮干し
エネルギー 245kcal 332kcal 322kcal 273kcal 358kcal
水分 38g 15.7g 17.1g 23.2g 12.5g
たんぱく質 43.1g 64.5g 65.7g 59.1g 80g
脂質 6.1g 6.2g 1.4g 2.5g 2.2g
炭水化物 1.5g 0.3g 7.6g 0.1g 0.1g
食塩相当量 7.1g 4.3g 6.4g 8.6g 1.5g
脂肪酸総量 2.96g 2.71g 0.45g 1.06g 1.09g
飽和脂肪酸 0.86g 1.27g 0.13g 0.35g 0.37g
一価不飽和脂肪酸 0.58g 0.61g 0.05g 0.33g 0.14g
多価不飽和脂肪酸 1.53g 0.83g 0.26g 0.38g 0.53g
n-3系多価不飽和脂肪酸 1.39g 0.66g 0.23g 0.31g 0.46g
n-6系多価不飽和脂肪酸 0.07g 0.1g 0.03g 0.06g 0.07g
16:0パルミチン酸 610mg 710mg 82mg 240mg 210mg
18:0ステアリン酸 110mg 180mg 33mg 58mg 120mg
18:1計 260mg 260mg 29mg 200mg 84mg
18:2n-6リノール酸 29mg 29mg 4mg 19mg 11mg
18:3n-3αーリノレン酸 21mg 19mg 1mg 15mg 4mg
20:4n-6アラキドン酸 21mg 46mg 17mg 29mg 34mg
20:5n-3イコサペンタエン酸 480mg 260mg 110mg 130mg 56mg
22:6n-3ドコサヘキサエン酸 770mg 320mg 100mg 150mg 370mg

いかなご

いかなごは「こうなご」のことです。いかなごは関西での呼び方のようです。

いかなごってどんな魚だったかなと思いました。ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑のイカナゴを見ると、こうなごのことだとわかりました。私は子供の頃、この佃煮が好きだったことを思い出しました。

煮干しは脂が少ない方がよい

煮干しに脂質が案外少ないのには理由があります。魚に含まれているEPAやDHAなど多価不飽和脂肪酸は酸化しやすいからです。ウイキペディアの煮干しにもこのように書かれています。

煮干の原料はいわゆる青魚で不飽和脂肪酸を多く含むので、製造から流通、保存に至る管理が適切に行われないと、脂肪の酸化が進み品質が低下する。

煮干しは保存性がよくないと加工した意味がなくなってしまいます。そして、ダシを取るならアミノ酸(たんぱく質)が主役です。

煮干しは生よりも脂がぐっと少なくなる

ちなみに、かたくちいわしの生と煮干しを比較してみましたが、脂質は、ほぼ半分になっています。生の刺身で食べるならよいですね。

食品100gあたりの
栄養成分
かたくち
いわし/生
かたくち
いわし/
煮干し
エネルギー 192kcal 332kcal
水分 68.2g 15.7g
たんぱく質 18.2g 64.5g
脂質 12.1g 6.2g
炭水化物 0.3g 0.3g
灰分 1.2g 13.3g
食塩相当量 0.2g 4.3g
脂肪酸総量 9.22g 2.71g
飽和脂肪酸 3.79g 1.27g
一価不飽和脂肪酸 2.65g 0.61g
多価不飽和脂肪酸 2.78g 0.83g
n-3系多価不飽和脂肪酸 2.24g 0.66g
n-6系多価不飽和脂肪酸 0.3g 0.1g

なぜ最初に「煮る」のか?

煮干しは最初になぜ「煮る」のだろう?と思いました。そして、上の表を見ていただくとおわかりになる通り、食塩相当量が多いです。食べると塩気があります。飼い猫に煮干しをあげるなといわれます。

国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所のサイトにある煮干しいわしに詳しい説明がありました。

塩水で煮熟する

95℃程度の塩水で煮熟します。100℃のお湯でぐらぐら煮るわけではない。

塩水で煮熟(加熱)することにより、内臓や筋肉が有する消化酵素の活性を停止させ、かつ微生物を減らし、 タンパク質の凝固を行います。乾燥工程で脱水し水分活性を低下させることによって、保存性を付与したものです。

また、加熱などにより、旨味成分であるイノシン酸の分解酵素の働きを止めたり、減少をも防止します。

塩水は身をしめるために使われます。確かに真水で煮たら身が崩れそうです。

塩水を用いるのは、製品のつやや身のしまりを良くするためであり、 真水では艶がでません。

NOTE

煮干しは、ダシを取る目的と、保存性をよくするために、原料は脂質が少ないものが選ばれます。

そして、魚の脂肪はEPAやDHAですが、炭素の二重結合が多く、酸化しやすいので、煮干しからオメガ3の脂肪酸を取ろうと考えるなら、缶詰を買ってきて食べた方がよさそうです。

煮干しのダシは少し加工されている方が使いやすく思います。

この記事ではホタテについてふれませんでしたが、ホタテのオメガ3脂肪酸という記事を書いています。

ホタテのオメガ3脂肪酸
ほたてがいは高タンパク低カロリーで、脂質はほどんどありません。オメガ3脂肪酸は「ほぼない」です。年間水揚げ量全体の40%が養殖ですが、養殖でも人の調整したエサが与えられることはないようです。

その他の水産物とオメガ3については、水産物の中のオメガ3をお読み下さい。

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